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チャールズ・アイヴス:オーケストラ・セット第2番

クリストファー・ドホナーニ指揮  クリーヴランド管弦楽団


アメリカの生んだ作曲家アイヴス(1874-1954)は、エール大学で作曲を学んだものの、それで生計を立てることは困難と判断し、卒業後は保険外交員として勤務。

その経験を活かして、1907年には自ら保険会社を創設し、実業家として大きな成功を収めました。

彼は仕事の余暇を利用して、趣味で作曲をしていた人として知られていますが、

それでも多調・無調・ポリリズム・微分音などを用いた実験的な作品は、当初こそ認められることはありませんでしたが、

現在ではアメリカ現代音楽の先駆的な作品として、高く評価されています。


アイヴスの曲全体に関する大まかな印象は、以前にエントリーしていますので、こちらをご覧になって下さい。

彼の作品を名曲と呼んで良いのかどうかは判りませんが、

その曲中には、私が少年時代から青年期にかけてキャンプなどで歌った、フォスターをはじめとするアメリカ民謡のメロディーが微かに聴こえるために、

例えて言えば、遠くから雑踏にまぎれて聴こえてくる祭囃子に郷愁を覚えるように、

若い頃の懐かしい想い出が蘇るような感慨が得られるのだと思います。


今日、ドホナーニの指揮で聴いたオーケストラ・セット第2番の演奏は、

これまでに聴いたアイヴスのどの曲のどの演奏よりも、そんな懐かしさが鮮烈に伝わってきました。

三曲からなるこの作品の、各々のタイトルと曲想がどう結びつくのか、正直申してよくわからないのですが、

第1曲:「われらの祖先への悲歌」
作曲された当初は、「フォスターへの悲歌」とされていた作品 

第2曲:ロックストルーンの丘
野外での人々の集い。ジャズ、ブルース、民謡などの様々な音楽が…

第3曲:ハノーヴァー広場北停車場から
1915年、客船「ルシタニア号」撃沈したドイツ海軍への怒りと、それに乗船していた128名のアメリカ人犠牲者への哀悼の意を込めた、アメリカ各地で抗議の声が高まりました。
偶々ハノーヴァー駅(ニューヨーク州)でこの時の様子を目撃したアイヴスが、その時の民衆の怒りや悲しみを作品化したもの。

多調音楽の神髄とも思える、力強い感動を伴なった、素晴らしい演奏です!


ドホナーニの指揮によって、混沌とした音の塊の中に含まれる多彩なジャンルの、様々な旋律が解きほぐされたように鮮明に聴けるのは、

各要素を奏でる音量のバランスに十分配慮して、音を磨きぬいているからだと思うのですが…。

素晴らしい20世紀のアメリカ音楽に大きな感動を受けることができた、素晴らしい演奏でした。

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