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ガブリエル・フォーレ:ピアノ五重奏曲第1番

パレナン弦楽四重奏団  ジャン・フィリップ・コラール(p)


この作品を作曲していた1903〜6年頃のフォーレ(1845-1924)は、

高音域は低めに、低音域は高めに、中音域はピッチは正常だが微かにしか聞こえないという聴覚障害に悩まされ始めました。

作曲家にとっては命取りともなりかねない聴覚異常に侵されつつ、そのハンディを克服しながら初めて手掛けたピアノ五重奏曲の創作は、大変な労苦を伴なったのでしょうが、

この曲は今も多くの専門家から、精妙な和声をもつ完成度の高い作品として、高く評価されています。


今日エントリーするディスクは、パレナン弦楽四重奏団とジャン=フィリップ・コラールのピアノによる演奏です。

第1楽章冒頭、ピアノのアルペジオに導かれて、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが加わりながら、ユニゾンによる分厚い響きへと変化していくところは、

森の奥深く、溢れるように湧きあがる泉のように、森閑とした中に得も言われぬ澄みきった清涼なロマンが漂う、大変に印象的な音楽!

第2主題以降の、静謐な雰囲気の中にも、5つの楽器が語り合う若々しく熱い情熱は、まさにポリフォニーの極致とも言える素晴らしい演奏と感じます。


第2楽章は、フォーレ特有の曖昧な調性の内声部か奏でる弦と、湿り気を帯びたように響くピアノは、

霧に包まれた早朝の冷涼な大気に包まれるような…、

中間部では木漏れ日が射し、辺りに輝きが増してくるような、

そんな晩秋の風情を思い浮かべる、ロマンに満ちた演奏!


第3楽章は、華やかさの中に、これまでフォーレの作品では余り体験したことのない、劇的・英雄的な主張が感じられる音楽。

若々しさと採れる半面、先述した聴覚障害と闘う心の乱れのようなものが窺われるようにも感じられるのですが…。、


ヴィア・ノヴァ弦楽四重奏団とユボーのピアノによる演奏、これも捨てがたい魅力を有するものですが、

第1楽章の余りの美しさに惚れこんで、パレナン盤をエントリーさせていただいたというのが実情なのです…。

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