歌詞の内容は、嘗てトルコの支配下に置かれたマジャールの人々の自由を渇望する気持を、空を飛ぶ孔雀に託したもの。
1939年、当時のアムステルダム(現ロイヤル)コンセルトヘボウ管弦楽団の創立50周年記念のために作品を委嘱されたコダーイは、このハンガリー民謡の旋律を主題として用いて変奏曲を作曲。
第2次世界大戦前夜という緊迫した世界情勢の中、
当時ナチスとともに非人道的な政策を強行していた自国ハンガリーのホルティ政権に対する怒りのメッセージとして、この曲の引用を思いついたと言われています。
参考までに歌詞の内容をライナーノートから紹介しますが、但しこれが全容か否かは不明です。
飛べよ、くじゃく 牢獄の上に
哀れな囚人たちを 解放するために
くじゃくは飛んだ 牢獄の上に
だが、囚人たちは 解放されなかった
くじゃくは飛んだ 牢獄の上に
哀れな囚人たちを 解放するために
主題と16の変奏曲によって構成されるこの曲は、ティンパニのトレモロが轟く陰鬱な雰囲気の中から主題が提示されますが、
その後に続く16の変奏は、歌詞の内容とは異なり、全曲にわたって声高に反戦を唱える内容ではありません。
第12〜13変奏にかけてこそ、張り裂けるような悲痛さや葬送行進曲を思わせる部分もありますが、
全体としてはハンガリーの美しい大地や、そこに生きる人々の活き活きとした生活が描かれた、民族色豊かな作品だと思います。
勇壮に奏でられる第1変奏が、第2変奏ではカノン風に、第3変奏では乱舞のようにと、めまぐるしく変化していきます…。
第6変奏では、ふと日本の祭囃子を思わせるような趣を…
第9変奏では、広々とした高原を吹き抜ける爽やかな風が感じられ…
第11変奏では、ゆるやかに奏でられる異国情緒あふれる抒情的な旋律…、
第14変奏での、日本の横笛を思わせる響きには、子供の頃の懐かしい風景を思い出したり…。
インスピレーションに溢れた、素晴らしい変奏曲だと思います。
本場物に拘るつもりはありませんが、ハンガリー生まれの指揮者ドラティによるハンガリア・フィルの演奏からは、そんな変奏の妙味が感じられました。
尚この曲は、近年吹奏楽用に編曲されて、コンクールでも数多く採り上げられている人気曲だそうで、そちらの方でも一度聴いてみたいと思っています…。