曲想は、生まれ故郷である南仏地中海沿岸の風土を反映したような、自由で楽天的なものですが、
ミヨー自身、「各楽器それぞれに独立した旋律、或いは固有の調性的な表現を担当させた」と言うように、
多くの曲は、2つ以上の声部がそれぞれ異なった調によって構成される、“多調音楽”として書かれているのも、大きな特徴です。
今日エントリーする8つの小曲からなる『プロヴァンス組曲』も然りで、
プロヴァンス地方に伝わる民俗音楽を主題とした8つの小曲から構成されるこの組曲は、
異なる楽器と調の絶妙な組み合わせの効果によるのでしょう、
大気の香りや風の色に直接に触れるような、独特の瑞々しい感覚に満ちた響きを楽しめる曲と感じます。
この曲を聴きながらゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ等の絵に描かれた、南仏プロヴァンスの様々な風景や、そこに生きる人々の生活を感じ取ることができるのです。
「第1曲」では、雑然とした華やかな賑わいに、カーニバルを楽しむ人々の活き活きとした姿が描かれています…
第2曲は、カーニバルの遠景といった趣の音楽と感じられます…
第3曲は、心浮き立つような祭りの行進と、
やがて訪れる夕闇の静けさが、名残惜しさを感じさせて…
第4,6曲目の楽しげで熱狂的な舞曲…
第5曲の、人を食ったようなひょうきんさは、さながら仮装行列を思わせるようで…
第7曲の重々しさは、野辺送りを思わせる葬送の音楽なのでしょうか。
終曲は、ピッコロの鋭い音色が野に吹く爽やかな風を思わせる、幸福感に満ちた田園舞曲を思わせます。
プラッソン指揮するトゥルーズ・カピトール管の演奏からは、フランスの片田舎の鄙びた雰囲気が横溢した、
まさに「プロヴァンス百景」といった趣が感じられる、素朴な音楽を楽しめました。
聴かれることの少ない佳曲の、佳演と言えるのではないでしょうか。