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ダリウス・ミヨー:プロヴァンス組曲

ミッシェル・プラッソン指揮  トゥルーズ・カピトール管弦楽団


ミヨー(1892-1974)は、紀元前5〜6世紀ごろから南フランスのプロヴァンス地方に定住しているユダヤ系種族の富裕な家庭に生まれ、生涯に500曲近くの膨大な数の作品を残しています。

曲想は、生まれ故郷である南仏地中海沿岸の風土を反映したような、自由で楽天的なものですが、

ミヨー自身、「各楽器それぞれに独立した旋律、或いは固有の調性的な表現を担当させた」と言うように、

多くの曲は、2つ以上の声部がそれぞれ異なった調によって構成される、“多調音楽”として書かれているのも、大きな特徴です。


今日エントリーする8つの小曲からなる『プロヴァンス組曲』も然りで、

プロヴァンス地方に伝わる民俗音楽を主題とした8つの小曲から構成されるこの組曲は、

異なる楽器と調の絶妙な組み合わせの効果によるのでしょう、

大気の香りや風の色に直接に触れるような、独特の瑞々しい感覚に満ちた響きを楽しめる曲と感じます。

この曲を聴きながらゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ等の絵に描かれた、南仏プロヴァンスの様々な風景や、そこに生きる人々の生活を感じ取ることができるのです。


「第1曲」では、雑然とした華やかな賑わいに、カーニバルを楽しむ人々の活き活きとした姿が描かれています…

第2曲は、カーニバルの遠景といった趣の音楽と感じられます…

第3曲は、心浮き立つような祭りの行進と、
やがて訪れる夕闇の静けさが、名残惜しさを感じさせて…

第4,6曲目の楽しげで熱狂的な舞曲…

第5曲の、人を食ったようなひょうきんさは、さながら仮装行列を思わせるようで…

第7曲の重々しさは、野辺送りを思わせる葬送の音楽なのでしょうか。

終曲は、ピッコロの鋭い音色が野に吹く爽やかな風を思わせる、幸福感に満ちた田園舞曲を思わせます。


プラッソン指揮するトゥルーズ・カピトール管の演奏からは、フランスの片田舎の鄙びた雰囲気が横溢した、

まさに「プロヴァンス百景」といった趣が感じられる、素朴な音楽を楽しめました。

聴かれることの少ない佳曲の、佳演と言えるのではないでしょうか。

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