最近聴いたCD

R.ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』第3幕前奏曲

レオポルド・ストコフスキー指揮  シンフォニー・オブ・ジ・エア管


高校生の頃から20歳代前半にかけて、ワーグナーに入れ込んでいたことがありました。

語学に弱いために、全曲を聴いたことは一度もありませんでしたが、彼の楽劇を至高の音楽と思い、社会人になって金銭的な余裕ができれば、「いつかはバイロイト詣でを!」などと憧れていました。

ですから、サラリーマンになって間もない頃に、K.ベーム指揮するバイロイト祝祭管弦楽団の『ニーベルングの指輪』全曲盤が発売された時、

これを機会にワーグナーの楽劇に親しもうと、布製のカートンボックス入りの限定版、「愛蔵家NO.」が墨書されるというLPを即刻予約しました(確か30,000円でした)。


しかし当時の私の生活は、朝の6時に家を出て、帰宅するのが夜の11時頃。遅い晩飯を終えると、後はひたすら眠るだけの毎日で、土日も仕事を優先するのが当然と見做されていた時代…。

気分転換に聴く趣味の音楽の筈が、ことワーグナーの楽劇に関しては、全てを忘れて聴いている筈が、

なぜか突然仕事上の人間関係や書類作成のことが頭に浮かんできて、かえって逆効果に…。

そんなこんなで、一通り聴き終えるのに1年を要し、それ以降は再びターンテーブルに載せる気持になれませんでした。


そんな体験があるために、トラウマと言うほど大げさなものではありませんが、サラリーマン生活に終止符を打った現在に至っても、敢えて長大な彼の楽劇を聴こうとは思いません。

ただワーグナーの曲が嫌いなわけではありませんので、曲の良いとこ取り、

即ち、序曲・前奏曲・時にハイライト盤を聴きながら、随所に散りばめられたロマンのエッセンスを楽しんでいます。


前振りが長くなりましたが、今日エントリーするのは、ストコフスキー指揮するシンフォニー・オブ・ジ・イヤーの演奏。

これ、LPを所有していたわけでもなく、高校か大学時代に多分FM放送で聴いただけの演奏でしたが、

10数年前に車の中でFM放送から流れる曲を聴いた時、「これ、絶対にストコフスキーの演奏だ!」と、瞬時に分かりました。

長らく記憶からは抹殺されていましたが、よほど強烈な印象を受けていたのでしょう。

弦の分厚い響きは、恰も運命が獲物に襲いかかり、呑み込んでしまうような、そんな情熱的で強烈な印象を抱いたことを鮮明に思い出しました。

そして、イングリッシュホルンの、運命に翻弄されるような、寂寥感漂う冴え冴えとした響きも!

ライナーノートによると、この分厚く熱っぽいサウンドは、「ユニゾンではなく、自由に、好き勝手にボウイングをさせることで得られる」ものだとのこと。

この曲は、普段聴く機会が少ないせいかもしれませんが、今聴いてもぞくぞくするような、素晴らしい演奏だと思うのですが…。

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