最近聴いたCD

ヴァンサン・ダンディ
フランス山人の歌による交響曲

ミシェル・ブロック(P) 
ペーター・マーク指揮  ベルン交響楽団


フランスの作曲家ダンディ(1851-1931)は、13歳の時に初めて訪れた祖父の出生地であるフランス南西部にあるセヴァンヌ地方がいたく気に入ったらしく、その後毎年のようにこの地を訪れるようになります。

そして35歳の1886年、夏季休暇で滞在していた期間中に、聴き慣れた当地の民謡をモチーフとした『フランス山人の歌による交響曲』が完成されました。

交響曲には珍しく独奏ピアノが活躍する作品です。


20歳代の半ばにFM放送で初めてこの曲を聴いた時、

第1楽章冒頭部のイングリッシュホルンが奏でる素朴で懐かしさを覚える旋律と、爽やかな高原を思わせる曲想に惹かれて、直ぐにLPを買いに行ったことを覚えています。


今日エントリーするのは、ペーター・マーク指揮するスイスのベルン交響楽団による演奏で、1985年に録音されたもの。

尚、ピアノのミシェル・ブロックは、1960年のショパンコンクールに出場した際に、

優勝したポリーニよりも高い評価を下した審査委員長のA.ルービンシュタインが、自らの名前で特別賞を与えたベルギー人ピアニストです…。


第1楽章は、前述したイングリッシュホルンの奏でる主題に続き、
日が昇るにつれて刻々と色彩が変化する山肌や、
大気の微妙な移ろいまでが感じられる清々しい音楽です。

第2楽章は、けだるい夏の日の午後の情景を顕わしているのでしょうか。
そんな中にもふと陽の光が翳って、大気がひんやりと変化する様子までもが表現されています。
遠くから聞こえるホルンが奏でる第1楽章冒頭主題は、迫りくる夕闇を感じさせる印象的なもの!

第3楽章は、山人たちの楽しい集いのひと時を表わしているのでしょうか。素朴で幸福感に満ちた、大変に心地良い音楽が展開されます。


ダンディのオーケストラ作品を聴くと、いずれも自然描写は大変に巧みなのですが、

保守的な傾向が強いために、同時期に活躍したドビュッシーのように、表現に斬新さが感じられず、

かつ旋律的な魅力にも乏しいことが、人気が出ない理由かと思っています。

そんな中で、民謡の魅力的な旋律を素材にしたこの曲は、巧みな自然描写との相乗効果で、

向暑の折、一服の清涼剤ともなり得る、爽やかな作品に仕上がったのだと思います。

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