最近聴いたCD

フェリックス・メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番

ナッシュ・アンサンブル 
マリアンネ・トルセン(Vn)・ポール・ワトキンス(Vc)・イアン・ブラウン(P)


40歳代半ばまでの私にとってのメンデルスゾーン(1809-1847)とは、

『ヴァイオリン協奏曲ホ短調』、『スコットランド』『イタリア』の2つの交響曲、それと『ヴェニスの舟歌』に代表される幾つかの無言歌…。

その程度の認識しかなかった作曲家でした。

ところが、何時・何処で・誰の演奏を聴いたのかは全く記憶にないのですが、

チェロが奏する、仄暗い不思議な魅力を湛えた第1楽章冒頭を聴いて、たちまちこの曲の虜になったことを覚えています。


今日エントリーするのは、イギリスのナッシュ・アンサンブルのメンバーによる演奏です。

個々のメンバーについてての経歴等、全く知識はありませんが、この演奏は特筆すべき素晴らしいもの。


第1楽章冒頭は、
抑え目のピアノの上を、
チェロが絹のように軽く柔らかい肌触りで、それでいて淡いメランコリーを含んだ美しい旋律を奏し、
それに寄り添うように奏される、仄かな情感を湛えたヴァイオリンの息を呑むような美しさ!
名人同士によるトリオ演奏とは一線を画した、アンサンブルを知りつくした演奏家が創り上げる、至高の美の世界です!!

やはりチェロで奏される第2主題は、
仄かな思いが高まり、少し情熱を帯びたものですが、
それでもメンデルスゾーンらしい格調を保った美しさは、アンサンブルの妙かとも思います。

第2楽章は、彼の無言歌を髣髴させる抒情的な世界!
ピアノで奏される第1主題の、親しみやすく美しいこと!
それを引き継いで歌われるヴァイオリンとチェロの二重奏でも、絶妙のアンサンブルが…。

第3楽章は、一陣の風に舞い上がる落ち葉を思わせるような、爽やかながらも幻想的な世界!
1826年に作曲された『真夏の夜の夢』序曲での、妖精が飛び回る場面を髣髴させるような音楽でもあります。

第4楽章では、楽しげで熱っぽい舞曲風のリズムが何度も繰り返されますが、
途中チェロで歌いだされヴァイオリンが唱和するアンサンブルの美しいこと!


この曲には、超大物ソリストの組み合わせによる定評ある名演奏が現役盤として存在していますが、

アンサンブルの妙を知り尽くしたメンバーによるこの演奏は、

随所にメンデルスゾーンの音楽の持つ密やかな美しさを感じさせてくれる、素晴らしいものだと思います。

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