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セルゲイ・プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番

イエフィム・ブロンフマン(P) 
ズービン・メータ指揮  イスラエル・フィルハーモニー管


プロコフィエフ(1891-1953)が22歳の時に作曲されたもの。

彼の初期作品の特徴として、奇矯なモダニズムや大胆な野蛮性が挙げられますが、これはその典型的な作品の一つと言われています。

曲の内容には、自殺した彼の親友であるピアニストとの個人的な想い出が、色濃く反映されているとか…。


1913年夏、作曲家自身のピアノで初演(於:パヴロフスク)された時には、

同年5月にパリで初演された『春の祭典』の再現とも言われるほどに、センセーショナルな騒動を巻き起こしたと伝えられています。

様々な指揮者によるディスクが発売され、コンサートでも頻繁にプログラムに登場する『春の祭典』は、音楽愛好家のレパートリーとしてすっかり定着しましたが、

同時期に作曲されたこの作品は、普段耳にすることが殆どないために、

初演からほぼ1世紀が経過した今になっても、未だに前衛的な音楽として、やや構えて聴く傾向は否めません…。

それでも、最近になって漸くアバンギャルドな先入観に拘ることなく、

時に抒情的な旋律を聴き取り、心地良いインスピレーションを抱けるようになってきました…。


第1楽章は、冒頭の透明で乾いたピアノの響きで開始され、相容れないもののぶつかり合いや、心を吹き抜ける隙間風のような空虚さが、
次第に熱っぽさを増し、圧倒的な高揚感を経て、訪れる美しい静寂…

第2楽章の、ひと時たりとも休むことが許されないピアノ演奏は、ただひたすら走り続けることから得られる充足感、それとも?

第3楽章は、威圧的なオーケストラの咆哮と、それに追随するかのようなピアノの強打は、超自然的な現象を思わせるような、有無を言わせぬ圧倒的な迫力!

第4楽章のカデンツォの純粋で乾いた抒情と、そしてコーダでの全ての存在を叩き潰すような野性的なエネルギー感!


1933年にアメリカから帰郷してソ連楽壇に復帰した後の彼は、「現代音楽は複雑になり過ぎた」と考え、

<簡易な、しかし独創的な旋律>を探索することで、バレー音楽『ロメオとジュリエット』に代表される作品を発表しました。

しかしながら、アバンギャルドな芸術を標榜した時代の彼の作品中には、後年追求した抒情性が既に表現されており、

逆に後年の作品にも、アバンギャルドな作風は和らげられてこそいますが、人々の複雑な感情を表現する音楽として、しっかりと残されています。

プロコフィエフの原点を知る上で、大変に面白い作品だと思います!

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