とはいっても、地域によって特徴には差異があり、その起源をたどると「マズレック」「クヤヴィアック」「オベレック」という3つの舞曲の複合体と言われています。
いずれにしても、ショパンにとっては幼い頃から日常的に耳にし、身に沁み込んだ音楽と言えるものでしょう。
1830年、ワルシャワでの独立運動を契機にして、その後は荒廃した故国に再び戻ることがなかったショパンは、
望郷の念を、このマズルカのリズムに託して綴ったのだろうと考えられています。
彼はワルシャワ時代にも何曲かのマズルカを作曲していますが、
祖国を去った後に作曲されたOp.6以降、生涯にわたって万遍なく作曲を続け、
作品番号がつけられたものだけでも全カテゴリー中最も多い49曲(合計で、ほぼ60曲)が残され、且つ小規模な作品ばかり。
そして作品の内容は、快活、素朴、華麗、優美、憧れ、憂愁、瞑想等々、曲ごとに多様な内容が表現されているために、
ショパンが時々の率直な心情を、日記を綴るように書きとめた作品群と考えられているようです。
今日エントリーする『4つのマズルカOp.30-1〜4』は、ポーランドの生んだ大ピアニストのルービンシュタイン(1887-1982)が1966年に全曲録音したものから…。
全体的に大変に落ち着いた演奏ですが、
曲ごとの表情が明確に、且つ活き活きと大らかに弾き分けられており、
原点がポーランドの農民の舞曲であることが偲ばれる演奏だと思います。
第1曲では、優美な中にもメランコリーな感傷が…
第2曲では、強い憧れが…
第3曲は昔から耳馴染んだ曲ですが、この演奏のような素朴で、活き活きと楽しげな印象を受けたのは、初めてのこと…
第4曲では、移ろいゆく不安定な心が、揺れ動くマズルカのリズムによって見事に表現されています…
ポーランド農民の民族舞曲のリズムとは言え、
本場物に拘る必要は毛頭ないと思いますし、
現にアシュケナージやフランソワ、ミケランジェリ等の素晴らしいマズルカの演奏を聴くことはできますが、
本場のマズルカのリズムからどんな感慨が得られるかを体験することも、貴重なものだと思うのです。