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W.A.モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.301   

オーギュスト・デュメイ(Vn)  マリオ・ジョァ・ピリス(P)


モーツァルト(1756-1791)は1764年、僅か8歳の時に現在K6、7とされる『クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ』を初めて出版。

12歳の頃までに18曲のヴァイオリンソナタを作曲しています。

しかし当時のソナタにおけるヴァイオリンの役割は、ピアノの序奏でしかありませんでした。


それからの約10年間、モーツァルトはこの二つの楽器を組み合わせた作品には手をつけませんでしたが、

ドレスデンの作曲家ヨーゼフ・シュスターのピアノとヴァイオリンを同等に扱ったソナタを聴いて、このジャンルでの表現の可能性を感じたのでしょうか。

再び作曲に取り組み、K.296〜K.547に至るまで20曲のヴァイオリン・ソナタを作曲しました。

その最初の曲が、今日エントリーしたト長調のK.301!

ちなみにK番号の若いハ長調(K.296)は、その1ヶ月後に作曲されたものです。


第1楽章は、いきなりヴァイオリンが主役となって穏やかで美しい第1主題を奏しますが、当時としては斬新なものだったのでしょうか。

この楽章では、二つの楽器が互いにお喋りをしたり、

時には口角泡を飛ばして言い争いをしたり、

再び仲睦まじく寄り添ったりと、

多彩な表現に富んだ、自由闊達で楽しい楽章です。

無邪気で愛らしい主題で始まる第2楽章は、二つの楽器が和気あいあいと語りながら進行して行きますが、

短調へと転調する中間部は、自らの過ぎ去りし日々を愛おしむような懐かしい感慨に襲われる、大変に美しい部分です!


デュメイとピリスのデュオは、よほど相性がいいのか、阿吽の呼吸というのを随所に感じます。

デュメイの奏するヴァイオリンのチャーミングで清々しい音色と、

ピリスの奏するピアノの音色の丁々発止としたやり取りは、聴き手の感興を呼び覚ますような素晴らしいもの。

名盤との世評の高い、グリューミオ/ハスキルの爽やかに流れる味わい深さとは一味違った、

この曲の奥深さを感じさせてくれると演奏だと思います。

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