最近聴いたCD

レーフ・ヴォーン・ウイリアムズ:揚げひばり
(ヴァイオリンと弦楽のためのロマンス) 

サー・エードリアン・ボールト指揮  ニュー・フィルハーモニア管


「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス」という副題を持つこの曲は、

ウイットに富んだ心理喜劇風の文体が、漱石の初期作品に影響を与えたと言われるイギリスの作家ジョージ・メレデスの詩「The Lark Ascending」に触発されて作られたもの。

『揚げ雲雀』とは、“空高く舞い上がって囀っている雲雀”の意味で、俳句を嗜まれる方には、春の季語として知られているようです。


「イギリスの田園風景を髣髴とさせる」と評される佳曲ですが、

初めて聴いた時、幼い日にひばりの囀りを聴きながら麦畑で遊んだ頃の長閑な雰囲気が、そっくりそのまま音楽になっていることに驚いたものでした。

静かな短い序奏に続いて、独奏ヴァイオリンが天空高く舞い上がり、囀る交わすひばりを髣髴させるように奏でる旋律の、のびやかで美しいこと!

民謡こそ使われていませんが、のどかで牧歌的な、そしてどこか懐かしさを覚える旋律を聴けば、

私と同年代もしくはそれ以上の方であれば、多分同じような感慨に浸られるのではないでしょうか!

爾来、アンドレ・プレヴィンがロイヤル・フィルを指揮したディスクを最高の描写音楽として、幼い頃のアルバムを見るように、折に触れて大切に聴いてきたものでした。


先日、この曲が1921年に初演された時の指揮者サー・エードリアン・ボールト(1889-1983)が、ニュー・フィルハーモニアを指揮したディスクを、初めて聴きました。

これまで描写音楽と認識し、幼い日々の懐かしい心象風景を思い浮かべながら感慨に浸っていたこの曲から、

自然に対する喜びや、感謝の気持ちに溢れた音楽を聴くことができました。

サー・エードリアン・ボールト!没後四半世紀が経過したこの地味な指揮者によるブラームスやヴォーン・ウイリアムズの演奏に、限りない魅力を感じるようになりました。

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