最近聴いたCD

リヒャルト・シュトラウス:オーボエ協奏曲 

オーボエ:マルティン・ガブリエル
アンドレ・プレヴィン指揮  ウィーン・フィルハーモニー管


R.シュトラウスが、第二次世界大戦で焦土と化したドイツの歴史、文化、伝統の喪失や人々の死に対する悲しみ、

崩壊していく祖国への惜別の思いを込めて『メタモルフォーゼン』を作曲したのは1945年、ドイツが戦争に敗れる直前のことでした。

81歳、最晩年のシュトラウスが書いたこの作品は、

彼の若き日の交響詩に代表されるようなロマンに溢れた、しかしやや誇大妄想的な音楽とは一線を画した、

現実を見つめた真摯な音楽として、彼の作品を嫌う人にも高く評価されています。


そんな音楽を書いた後に終戦を迎えて、ドイツを離れ、スイスの山荘で隠遁生活を送ることになったシュトラウスが、この地で最初に作曲したのがこのオーボエ協奏曲。

簡明ですが繊細なオーケストレーションと、オーボエの冴え冴えとした音色とが醸し出す透明な牧歌的雰囲気は、

祖国の敗戦を体験し、諦観の境地に至ったシュトラウスの無垢な心境を表しているのでしょうか…。


今日エントリーするディスクは、マルティン・ガブリエルのオーボエ、アンドレ・プレヴィン/ウィーンフィルの演奏によるもの。

第1楽章は、ちょっとした気持ちの動揺を思わせる短い序奏の後、
独奏オーボエによって憧れに満ちた大変に美しい旋律が息をつく間もなく流れるように奏されますが、技術的に大変に難しいのでしょうね…。

この短い序奏は、その後楽器を変えて何度も登場しますが、
これが絶妙のアクセントとなって、単調になりそうなこの楽章に発展性がもたらされているように思います。

切れ目なく続く第2楽章は、移ろいゆく光の陰影が感じられる、ロマンティックなもの。

勿論オーボエが主役なのですが、ウィーン・フィルのメンバーが奏する木管楽器やホルンとのやり取りが秀逸で、うっとりと聴き惚れてしまいます!

第3楽章はラプソディックな陽気さ!曲は華やかに発展していきます。

ウィーン・フィルの音色を活かし切った、素晴らしい演奏だと思います!


未だ20歳代前半の頃、新聞のコラムで吉田秀和氏が絶賛されていたカラヤン/ベルリン・フィルの演奏をLPで聴きましたが、

当時はこの曲の良さが全く理解できませんでした。

その後も、多くの方が絶賛されるこの演奏、数年前から嘗ての名オーボエ奏者ローター・コッホの演奏に注目し始めた私としては、

入手可能であれば是非とも聴き直してみたい演奏なのです!

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