最近聴いたCD

ヨハネス・ブラームス:5つの歌Op.104 

ヘルムート・リリング指揮  シュトゥッガルト・ゲモンゲン聖歌隊


ブラームスは生涯に合唱・重唱・独唱曲を合わせると、300曲を超える声楽曲を作曲しましたが、一般的に広く知られている曲と言えば、せいぜいOp.49-4の『子守唄』くらい…。

クラッシック音楽ファンにとっては、それに加えて古今の大物指揮者の演奏が数多く残されている『ドイツ・レクィエム』が挙げられる程度でしょうか…。

斯く言う私も、ドイツ歌曲の好きな(というか、そのジャンルにしか興味を示さない)友人の影響がなければ、おそらく生涯聴く機会はなかったかも知れません。


聴き始めた頃は、心の琴線に触れる旋律に巡り会えず、なかなか馴染めなかったブラームスの声楽曲ですが、

それでも聴いているうちに、少しづつ親しみが湧くようになってきました。

ブラームスの声楽曲には民謡を基にした旋律や、自然や恋愛をテーマにした詩に曲を付けた作品が多いのですが、

特筆すべきは、35歳の時に完成された『ドイツ・レクイエム』。

これまでは死者の安息を神に願う内容だったものが、

死によって残された人々への慰めを主題として扱って以降、

この概念は、宗教曲以外の作品にも彼特有の憂愁や諦観を伴なって、彼の作品にしばしば表現されていると思われます。


今日エントリーするOp.104の『5つの合唱曲』は、

第1曲:夜警T、第2曲:夜警U、第3曲:最後の幸福、第4曲:失われた青春、第5曲:秋に

以上の5曲により構成さており、そんな作風が顕著に表れた作品の一つだと思います。

とりわけ第3、5曲については、内容の深さにおいてブラームス芸術の白眉と言えるのではないでしょうか。

ヘルムート・リリング指揮するシュトゥッガルト・ゲモンゲン聖歌隊によるこの演奏は、

ブラームス特有の豊潤な響きの中から、情感に溢れかつ崇高すら漂う、ポリフォニーの極致とも思える本当に素晴らしいものだと思います!

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