クラッシック音楽ファンにとっては、それに加えて古今の大物指揮者の演奏が数多く残されている『ドイツ・レクィエム』が挙げられる程度でしょうか…。
斯く言う私も、ドイツ歌曲の好きな(というか、そのジャンルにしか興味を示さない)友人の影響がなければ、おそらく生涯聴く機会はなかったかも知れません。
聴き始めた頃は、心の琴線に触れる旋律に巡り会えず、なかなか馴染めなかったブラームスの声楽曲ですが、
それでも聴いているうちに、少しづつ親しみが湧くようになってきました。
ブラームスの声楽曲には民謡を基にした旋律や、自然や恋愛をテーマにした詩に曲を付けた作品が多いのですが、
特筆すべきは、35歳の時に完成された『ドイツ・レクイエム』。
これまでは死者の安息を神に願う内容だったものが、
死によって残された人々への慰めを主題として扱って以降、
この概念は、宗教曲以外の作品にも彼特有の憂愁や諦観を伴なって、彼の作品にしばしば表現されていると思われます。
今日エントリーするOp.104の『5つの合唱曲』は、
第1曲:夜警T、第2曲:夜警U、第3曲:最後の幸福、第4曲:失われた青春、第5曲:秋に
以上の5曲により構成さており、そんな作風が顕著に表れた作品の一つだと思います。
とりわけ第3、5曲については、内容の深さにおいてブラームス芸術の白眉と言えるのではないでしょうか。
ヘルムート・リリング指揮するシュトゥッガルト・ゲモンゲン聖歌隊によるこの演奏は、
ブラームス特有の豊潤な響きの中から、情感に溢れかつ崇高すら漂う、ポリフォニーの極致とも思える本当に素晴らしいものだと思います!