最近聴いたCD

アレクサンドル・グラズノフ:バレー音楽『四季』 

ネーメ・ヤルヴィ指揮  スコットランド国立管弦楽団


ロシアの作曲家グラズノフ(1865-1936)の名前は、昔から良く聞いてはいましたが、私が知っている範囲では、際立って印象に残るような曲もありませんでした。

『標準音楽事典(音楽之友社)』や『Wikipedia』で彼の作風を調べると、

彼に影響を与えた作曲家として
“バラキレフの国民学派の直系”
“ボロディンの叙事詩的な壮大さ”
“リムスキー=コルサコフの巧みな管弦楽法”
“チャイコフスキーの抒情性”
“タネーエフの対位法”
等が具体的に列挙されていますが、

これらロシア的な音楽の性格を基調におきながら、ヨーロッパ音楽の持つ伝統的な形式性や、あらゆる民族の音楽様式を吸収した新しい音楽を作り出したと言われています。

そのような折衷的な作風のために、同時代に生きたストラヴィンスキー(1882-1971)や、グラズノフの弟子だったショスタコーヴィッチのような強烈な個性が感じられず、印象が薄められる要因かとも思います。


今日エントリーするのは、彼の創作活動の絶頂期にあたる1899年に完成された、一幕四場からなるバレー音楽『四季』。

冬に始まり、春、夏、秋と、ロシア大地の四季の移り変わりをカラフルに表わした音楽です。

ただLP時代に聴いていた印象は、(旧)ソ連の観光協会(?)のキャンペーン用かと思えるほど、かの国の四季の美しさ・楽しさをデフォルメした、絵葉書のような音楽…。


しかし、昨日久しぶりに聴いたヤルヴィの演奏からは、嘗てこの曲から感じ取ることができなかった密やかな自然の息吹が感じられて、心の琴線に触れる思いがしたのです。

凍てつくような吹雪を思わせる序奏部に続く「冬」のテーマが、変奏曲となって霜、氷、霰、雪が登場する幻想的な世界へと誘う第1場…!

フルートの軽やかな旋律に誘われるように開始され、長閑さを湛えつつも、生命の芽生えが感じられる第2場「春」。

第3場「夏」の訪れは、爽やかで伸びやかな音楽で開始され、夏爛漫(?)を想わせるロシアンワルツや、ハープのアルペッジョに乗って奏でられる清々しい舟歌…。

第4場「秋」は収穫の音楽で、「冬」「春」「夏」の音楽が順次登場して、酒宴を盛り上げるという趣。中間部の木管や弦楽器が醸し出す感傷的な雰囲気とが対照的です!


一聴すると煌びやかさだけが目立つのですが、よーく聴くと根底にはロシア国民学派の素朴さが流れているこのバレー音楽!

これを機会に、彼の交響曲やヴァイオリン協奏曲等、代表的作品だけでも傾聴しようと思います。

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