最近聴いたCD

レイフ・ヴォーン・ウイリアムズ:
トマス・タリスの主題による幻想曲 

サー・エードリアン・ボールト指揮  ロンドン・フィル


この曲のタイトル名にある“トマス・タリスの主題”というのは、

16世紀イギリスの作曲家トマス・タリスが、カンタベリー大司教のパーカーが出版した「イギリス詩編集」のために書いた9曲の讃美歌のうちの、3曲目に該当するそうです。


イギリス近代の作曲家レイフ・ヴォーン・ウイリアムズ(1872-1958)の出世作と言われており、1910年に作曲されたもの。

弦楽で奏でられるこの曲に、古色蒼然としたオルガンのような響きが感じられるのは、

普通の弦楽オーケストラで構成されるアンサンブル、各パート2人ずつからなるアンサンブル、それに弦楽四重奏という三種類のアンサンブルが、

互いに交代で旋律をかけ合うことによって得られる効果だとか…。

教会の中に佇んで、壁に書かれた宗教画を眺めながら、懐かしい古からの響きを聴くような感慨の音楽。

耳を澄ませると、古代の賢人の会話が聞こえてくるようで、伝統に培われた風格がいやがうえにも感じられる、素晴らしい響きです!


今日エントリーする演奏は、サー・エードリアン・ボールト指揮するロンドン・フィルの演奏。

以前は、厳粛な雰囲気の中に身を置き、溢れる宗教的な感動に涙するような演奏を好んで聴いていましたが、

最近愛聴しているボールトの演奏は、そういった感動からは一歩も二歩も退いた、中庸を得た演奏。

しかしながら、聴き込むほどに味わいは深まるばかりです!


文化的に成熟したと言われるイギリスという国家の伝統を感じざるを得ない、ヴォーン・ウィリアムズのこの佳曲!

全ての弦楽合奏曲の中でも、曲の持つ内容深さの点において、最高峰に位置する名曲だと、最近思うようになりました。

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