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ガブリエル・フォーレ:組曲『ペレアスとメリザンド』 

ロレイン・ハント(ソプラノ)
小沢 征爾指揮  ボストン交響楽団


メーテルランクの戯曲『ペレアスのメリザンド』の付随音楽として作曲された音楽から、フォーレ自身が5曲を選んで、組曲に編成しました。

物語の粗筋は、森の中の泉の畔で泣いていた神秘的なうら若き少女メリザンドは、狩りで森に迷い込んだ王族の跡継ぎで、半年前に妻を亡くしたゴローに見染められ、彼の後妻として迎えられました。

しかし、ゴローの年の離れた異父弟ペレアスもまた彼女に惹かれ、二人はお互いに心を許しあっていきます。

そのことを知って苛立つゴローは、二人の密会現場を捉えてペレアスを殺害、

メリザンドもその時に軽い傷を負いますが、結局この傷が命取りとなって、お腹に宿したゴローの子を産み落とした後、そのまま息絶えるという物語です。


組曲版は、ゴローに出会ってから死に至るまでのメリザンドを中心として構成されています。

〈第1曲:前奏曲〉
悲劇的な宿命を感じさせる美しくも儚さを湛えた静謐な旋律で開始され、
ペレアスとの出会いを予言するように情熱的な盛り上がりを見せますが、
それがいったん鎮まった後のホルンの響きは、第1幕での狩りで道に迷ったゴローの登場へと繋がる、牧歌的な側面も感じられる穏やかな音楽です。

〈第2曲:糸を紡ぐメリザンド〉
ゴローの嫉妬心のために自由を奪われ、幽閉された古城の一室で糸を紡ぐメリザンドの心境を表した音楽。弦の細かい連譜が糸車の回る音を連想させ、それに乗って奏でられる美しくも悲しげなオーボエの旋律が印象的です。

〈第3曲:メリザンドの歌〉
幽閉されたメリザンドが、ペレアスを想って歌っているのでしょうか。純真な女性の切なさが感じられます…。

〈第4曲:シシリエンヌ〉
ペレアスとメリザンドの密会の場であり、後にペレアスがゴローによって殺害される泉の畔で戯れる場面に先駆けて奏される、儚く美しい音楽。
ハープの分散和音に乗って独奏フルートが奏する旋律は、とりわけ有名!

〈第5曲:メリザンドの死〉
メリザンドの葬送の音楽。妻の死を嘆くゴローの慟哭を表現するような盛り上がりの後、消えいるように終わるこの曲は、薄幸のままに死したメリザンドの悲しい運命が、強く印象付けられます。


小沢征爾指揮するボストン交響楽団の1986年の演奏をエントリーします。

小沢さんのフォーレは、静謐で柔らかい響きでメリザンドの儚さを歌いあげた、美しさが際立った演奏と感じます。

第3曲を歌うソプラノのロレイン・ハントの可憐な歌声も、このディスクの魅力の一つ。

組曲版を入手される際には、第3曲「メリザンドの歌」の入ったディスクをお薦めします。

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