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セルゲィ・ラフマニノフ:幻想的小曲集 

ウラジミール・トロップ(ピアノ)


ラフマニノフ(1873-1943)がモスクワ音楽院を卒業した18歳の時に完成した、5曲の小品からなるもの。

それぞれが若々しく瑞々しい感性に溢れたものですが、完成から半世紀後の1940年になって、作曲者自身により第3、5曲の伴奏音型を中心に、大幅に改訂が施されています。

今日エントリーしたトロップ盤は、この改訂版により演奏されています。


全5曲を他のピアニストで聴いたことはないので比較はできませんが、

彼の演奏の特徴は、穏やかな静謐さに包まれたロシアン・メランコリーを感じさせるものと言って差し支えなかろうと思います。


第1曲「エレジー」は、若者特有の甘美な感傷が印象的な曲で、異性を恋する切ない心が感じられる美しいメロディー…。

第2曲「前奏曲」は、浅田真央さんのフリーの演技曲で、ラフマニノフ作品の中でも最も人気の高い作品の一つ。
“前奏曲op.3-2”或いは“鐘”と記されて、しばしば彼の「前奏曲集」や「ピアノ名曲集」にも登場する人気曲です。
「ロシアの鐘の響きは、ラフマニノフの心の原風景」と言われますが、
この神秘的な音の響きは、聴く時々によって異なった様々なインスピレーションを与えてくれる、素晴らしい作品と感じます!

第3曲「メロディー」の音の色彩感の変化が醸す雰囲気は、真青に澄んだ青空が、やがて暮れなずむ夕陽で茜色に染まり、静かなひと時が訪れるような、そんな感慨が得られる曲です。

第4曲「道化師」は、主部での華やかな饒舌さとひょうきんさ、中間部の人懐っこい優しさとの対比が興味深い、なかなかの佳曲です…。

第5曲「セレナーデ」は、ワルツのリズムに乗った装飾的な煌びやかさが際立つ音楽…。


第2曲以外は、なかなか聴く機会に恵まれませんが、

いずれの曲からも、若き日のラフマニノフの瑞々しい抒情が感じられる、佳曲揃いの作品集!

トロップの演奏を聴いて、そう感じました。

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