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J.S.バッハ:ミサ曲ロ短調 

ヤルト・ヴァン・ネス(アルト)  キース・ルイス(テノール)他
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 バイエルン放送交響楽団・合唱団


マタイ受難曲やヨハネ受難曲と並び、バッハ作品の中でも最高峰であるのみならず、音楽史上の最高傑作の一つとも評される作品。

第1部:キリエ(3曲)とグローリア(9曲)、

第2部:ニケーア信経=クレド(9曲)、

第3部:サンクトゥス(1曲)、

第4部:オザンナ(2曲)、ベネディクトゥス、アニュス・ディ、ドナ・ノビス・バーチェム(各1曲)、

以上の全27曲から構成されるこのミサ曲は、

作曲された年代が、1724年から最晩年の1749年にわたっており、

楽譜も4部がひとまとめにされてはいたものの、

ミサの各部分のタイトルのみが記されているだけで、4部をまとめたタイトルは記されていないために、

バッハ自身はこれらを一体の作品として考えていなかった、とする説もあるようですが、真偽のほどは不明…。


ただ、演奏時間が2時間を超える長大なミサ曲ですが、

素晴らしい演奏に恵まれれば、至福の時間はあっという間に過ぎ去ってしまいます!

バッハが一つのミサ曲と考えていたか否かは別として、

指揮者に裁量によって最高峰の完成された作品となり得ることは、メンゲルベルク、リヒター、クレンペラーを始めとする名盤の存在が、そのことを証明しています。


この曲は、廃盤になったディスクも含めると、これまでに80種類を超える演奏が発売されているそうです。

いかんせん長大な曲ですので、時間の関係で世評の高い高い5種類の演奏しか聴いていないのですが、それぞれに素晴らしい演奏だと思います。

その中でも、静謐さとヒューマンな温かさ、それに素朴さが感じられて、今最も共感しているジュリーニ指揮するバイエルン放送交響楽団の演奏をエントリーします。


キリエ冒頭の、静寂の中から滲み出るように湧きあがる「主よ、憐れみたまえ」の神秘的な合唱を聴くと、

共感に包まれながら、厳かなバッハの世界へと誘われて行くように感じます…。

グローリアでは、第6曲「われら主をほめ」での、打ち震えるような喜びを表現したソロ・ヴァイオリンの音色とソプラノ独唱が、

第9曲「世の罪を除きたもう者よ」での神秘的な合唱と、天上から洩れくる光を思わせるようなフルートの柔らかな音色、

第10曲「父の右に坐したもう者よ」での、慈愛に溢れたオーボエ・ダモーレの響き、

第12曲「聖霊とともに」では、たたみかけるような素朴な歓喜の表現が、とりわけ印象的です。


個々の曲を採り上げるときりがないので、この辺りで止めておきますが、

最後にどうしても外せないのは、終曲「われらに平和を与えたまえ」

厳かな管弦楽と合唱に始まり、神の啓示のように神々しいトランペットの響きに導かれつつ高まる感動は、やがては陶酔の境地へと…。

当時80歳だったジュリーニの、これは渾身の名演だと思います!

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