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カロル・シマノフスキー:3つの神話 

諏訪内 晶子(ヴァイオリン)  フィリップ・モル(ピアノ)


シマノフスキー(1882-1937)は、20世紀前半のポーランドを代表する作曲家。

1914年にローマ、シチリア、アルジェ、チェニス等を訪れて古代遺跡に遭遇したり、

ギリシャやアラビア・ペルシャの古代文学を学ぶことにより、

後期ロマン派の影響から徐々に脱却して、描写要素と無調的な手法とを結びつけた神秘的な作風へと変化していきます。


今日エントリーした『3つの神話』は、ギリシャ神話をモチーフにした3つの音楽詩であり、

各曲に付けられた暗示的なサブタイトルが、その時代のシマノフスキーの作風を端的に表していると言われています。


第1曲「アレトゥーザの泉」のアレトゥーザとは、水の精の名前。

川の神アルペイオスの執拗な求愛から逃れるために、女神アルテミスに頼んで、泉に姿を変えてもらったという物語がバックにあります。

こんこんと湧き出る清らかな泉を想わせるようなピアノの旋律をバックにして、ヴァイオリンの甘美な陶酔を感じさせる神秘的な旋律は、格別な美しい世界です!

第2曲「ナルキッソス」とは、美少年の名前。

他人を愛することができない因果を負ったナルキッソスが、

泉に映った自分の姿を見て、その美しさに一目惚れしてしまったために、そこを離れることができず、遂にはやせ細って死んでしまうという物語…。

時に陶然とするような、時に消え入るような溜息を思わせる官能的なヴァイオリンの音色!

第3曲「ドリュアスとパン」の物語は、

羊飼いとその群れを監視する半獣神パンから言い寄られた森の妖精ドリュアスは、

執拗に言い寄るパンから逃れたい一心で葦に姿を変えたが、

それでも彼女を諦めきれないパンは、彼女の化身の葦で笛を作り、片時も離さなかったというもの。

ヴァイオリンの奏する五月の蝿を模したような執拗に繰り返されるいらだたしい音色は、ドリュアスに言い寄るパンの執念を表現しているのでしょうか。

葦笛を思わせるヴァイオリンの音色は、ハーモニクスという奏法によりもたらされる効果だそうです…。


この曲は、実は諏訪内晶子/フィリップ・モルのこの演奏しか聴いたことがないのですが、

彼女の神秘的な雰囲気を湛えた官能的な音色に惚れこんで、エントリーした次第です。

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