詩人ダウソンの人生は、貧苦、悲恋、不治の病、そして酒に溺れ、世に認められることもなく幸の薄い33年の人生を終えましたが、
マーガレット・ミッチェルの小説『風と共に去りぬ』や、映画『酒と薔薇の日々』という題名は、彼の詩の中から引用されたもの。
彼の名を意識する人は少ないでしょうが、その作品は現在もなお、細々とですが命脈を保っています。
長編詩『日没の歌』も、そんな一つと言えるのでしょう。
日没時の寂寥感を人生の黄昏に重ね合わせたような内容の作品は、彼の生きざまの反映と考えても差し支えないでしょう。
ディーリアスの作風は、
「印象派と後期ロマン派を時代の背景としてユニークな美の世界を築き、世紀末の哀感と人間性の永遠の悲愁が交錯している」(三浦敦史)
その音楽の世界は、ダウスンの詩の世界と共通するもののように感じられます。
メゾソプラノとバリトン独唱、合唱、管弦楽のためのこの歌曲は、それぞれが以下のような詩句で始まる、8つの部分から構成されています。
1)落ちゆく夕日の歌
2)愛しい人よ、微笑みを止めて、しばし悲しみに浸れ
3)淡い琥珀色の光が
4)耐えがたい悲しみ
5)別離の悲しい海のほとりで
6)見よ、木立としなやかな柳が
7)悲しいというのでもなく
8)泣きや笑い、愛や欲望や悲しみも、そう長くはない
昨年亡くなったヒコックス指揮するボーンマス交響楽団および合唱団の演奏では、
水彩画のような色調で奏でられる木管楽器と弦楽器の音色、それに独唱と合唱が絶妙に解け合い、
自然界の静謐さの中に悲しみが滲むような、得も言われぬ世界を体験することができました。
このオーケストラの演奏を聴く機会は滅多にないのですが、
鳥の囀りや梢を渡る風の音のように、密やかな自然の息吹が感じられる木管楽器の音色は、とりわけ素晴らしく、
イギリス音楽を中心に、もう少し聴いてみたいオーケストラだと思います。