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セルゲイ・プロコフィエフ:交響組曲『キージェ中尉』  

クラウディオ・アバド指揮  シカゴ交響楽団


1933年、同名の映画音楽として作曲された中から、作曲家自身が5曲を選んで組曲化したものです。

映画の粗筋は、ある日突然女官の悲鳴によって昼寝を邪魔された皇帝は、宮殿内の警備担当者の職務怠慢と見做して、側近にその日の責任者名を問い詰めましたが、

皇帝の逆鱗にしどろもどろになった側近が伝えた名前を、現実には在籍しない『キージェ中尉』と聞き違え、

彼をシベリア流刑にするように命じました。

自分達に災いが及ぶことを恐れた側近たちは、口裏を合わせて架空の人物『キージェ中尉』をでっちあげ、処刑したことにして一件落着したかと思われたのですが…。


ところが皇帝は、「暗殺者に襲われる危機を自分に知らせるために、キージェ中尉がわざと女官に悲鳴をあげさせた」と妄想して、

我が身を救ってくれた忠臣として褒賞を与えるために、

彼をシベリアから呼び戻すよう、部下に命じます。

皇帝は、実在しない彼のために美しい妻を娶らせたり、その他にもさまざまな厚遇を与えるのですが、

側近たちは、そのたびに嘘がばれないように取り繕うために、にっちもさっちもいかないドタバタ劇が生じます。

そんな対応に疲れ果てた側近たちは、キージェ中尉を死んだことにして葬式を出して、国王を二重に欺く…

こういった風刺的・喜劇的な内容の映画に、曲を付けました。


こんな内容の音楽を、アバド/シカゴ交響楽団は、一つ一つの音が生きているように、実に楽しく演奏しているのです。

第1曲「キージェの誕生」では、朝靄の中、はるか遠くから聞こえるコルネットの響きはいかにも神秘的に聞こえますが、

すぐにピッコロのまじめくさった旋律や、大げさでわざとらしく鳴り響く大太鼓が!

自由な空想が湧いてくる、大変に楽しい音楽です。

第2曲「ロマンス」は、妖艶さを漂わせた物憂げなコントラバスで始まり、それに輪をかけたようなサクソフォン、フルート、ピッコロが…

アバドの演奏では、上述した楽器の表情が明晰で、いろんな状況が鮮明に浮かび上がってきます!

第3曲「キージェの結婚」も、物語の粗筋を漠然とでも知っておけば、どこか嘘っぽい結婚行進曲(?)と華やかさが同居した諧謔的な音楽が、すんなりと受け容れられると思います。

第4曲「トロイカ」は、一聴すると軽快で楽しげな曲なのですが、“女とは…”というような、多少隠微な内容の歌詞が付けられている版(小沢征爾/BPO他)も存在するそうです…。

第5曲「キージェ中尉の葬式」では、葬送の厳かな曲と第2曲『ロマンス』の旋律が同時に進行し、どこかお気楽な雰囲気が漂います。


映画のストーリーはともかくとして、音楽は判り易く、かつ内容の濃いものだと思いますので、「プロコフィエフはいまいち…」と感じておられる方にも、お薦めできる曲であり、演奏であると思います。

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