テオルボやギター奏者であると同時に、それらの楽器のための作品も残しています。
この5曲の舞踊組曲を無伴奏で演奏するテオルボという楽器は、
16世紀末に現れ、バロック末期まで通奏低音やソロ演奏にも使用された、14弦からなるリュート族の撥弦楽器。
低音を豊かに響かせるために、洋梨型の胴体は通常のリュートよりも大き目で、1m前後のネックが付けられた形状のものです。
この豊かな響きを有する楽器の音色は、
フランスバロック音楽特有の典雅さに加えて、一抹の哀愁を湛えたヴィゼーの曲とは、素晴らしくマッチしたもの!
CD一枚分のバロック音楽を聴き通すことなど滅多にない私ですが、
それぞれが、「プレリュード」「アルマンド」「クーラント」「サラバンド」「メヌエット」「ジーグ」等、5〜7曲から構成されるこれらの舞踏組曲に気持ちよく浸っているうちに、いつの間にか一時間余りが経過していました。
ヴィゼーの曲の特徴については、或るプロのリュート奏者の方が、
「アルマンドやサラバンドのようなゆったりした曲でも、1小節に音が4〜5つしかなく、間が持ちません。『装飾音で補うように!』ということなのでしょうが、当時の約束事を把握するすべがなくって…」
このようにおっしゃっていました。
演奏者の裁量が問われる作品ということでしょうね…。
元々古典派以前の音楽はそれほど聴いていませんので、
ヴィゼーという作曲家の存在や、
リュート・テオルボ奏者のパスカル・モンティエ(フランス人)の名前も、
このディスクで初めて知った次第です。
曲の呼吸が自然で、滑らかに流れていたからこそ、思わず惹き込まれたのだろうと思います。
この作曲家の別な作品を、この奏者の演奏で聴いてみたいと切に思えるような、素晴らしい体験でした!