最近聴いたCD

エクトル・ベルリオーズ
劇的交響的『ロミオとジュリエット』

アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(Ms)他  リアス室内合唱団

ジェームス・レヴァイン指揮  ベルリン・フィルハーモニー


申すまでもなく、シェークスピアの有名な悲劇を題材にしたもので、

「合唱、独唱、および合唱によるレチタティーヴォのプロローグ付き劇的交響曲」と銘打たれた、大編成のオーケストラによる規模の大きな作品。

この曲を始めて聴いたのは、20年近く前になるでしょうか。


あの『幻想交響曲』や『レクイエム』の鮮烈な印象が強く焼き付いている上に、“劇的交響曲”と銘打たれているものですから、

「どのような悲劇に仕上げているのか」

「修羅場をどのように描いているのか」

「反目しあう憎しみの表現は…」

「バルコニーの愛の場面は…」等々、

当然のようにドラマティックな展開の音楽を期待していたのですが…。

ベルリオーズは、この悲劇を生んだ様々な要因はあくまでも脇役として、必要以上に目立たせず、

若い男女の純愛をメインテーマに据えて音楽化していると聴き取れます。


この曲を始めて聴いた当時は、官能的な愛の場面や不条理な憎しみまでをも描き切ったプロコフィエフの同名のバレー音楽に心酔しており、

同様な音楽を期待して裏切られたことを思い出します。

それは今聴いても、原作の悲劇の内容を考えると、見方が一面的で、声楽の含まれた楽章が説明的に過ぎるように思えることは確かです。

しかし、様々な感情を表現するためにオーケストラに施した工夫や、

素晴らしい旋律に陶酔できる音楽が随所に聴かれ、それを楽しめれば良いと思っています。

尚、曲の構成を1〜3部とするもの、1〜4部とするもの、第1〜7楽章(新全集版)とするものがあるようですが、

今日エントリーするレヴァイン/ベルリン・フィルのライナー・ノートでは、1〜7楽章と記されていますので、こちらに基づいて述べさせていただきます。


第2楽章「キャピュレット家の宴」での華やかな舞踏会を髣髴させる音楽と併行して、金管が奏する威厳を誇示する音楽からは、不穏な雰囲気が感じられますし、

第3楽章「愛の情景」の場面では、初めて恋に陥った二人の気持の動揺や、次第に精神的な高まりが感じられる音楽には、ベルリオーズが描いた、プラトニックな愛を感じます。

第5楽章「ジュリエットの葬送」では、清らかな美しさを称えつつも、ついには悲しみへと収束する展開の妙が…。

第6楽章「キャピュレット家の墓でのロメオ」での、トロンボーンと弦楽が奏する悲しみの音楽や、クラリネットのむせび泣くような旋律等…。

但し終楽章では、高僧ローレンス師によるお説教に基づいて進行する音楽は、ちょっと理解に苦しむ展開と思えるのですが…。


それでも、他の作曲家の音楽表現とは異なる、聴きどころの多い素晴らしい作品だと思います。

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