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R.シュトラウス:交響的幻想曲『イタリアから』

ルドルフ・ケンペ指揮  シュターツカペレ・ドレスデン


R.シュトラウス(1864-1949)は21歳の時に、休暇で訪れたイタリアの美しい風景に感動を受け、交響的幻想曲『イタリアから』の作曲を思い立ったと言われています。

18歳の時には、既に古今のホルン協奏曲の中でも名作と言われる第1番を完成させたシュトラウスですが、

この曲は、全4楽章それぞれに標題が付けられており、

実質交響詩のような内容の4曲を、「イタリア」という共通項で括って並べただけの、全体としては散漫な感じの否めない作品のように思えます。


ところで、この曲で誰もが注目するのは、第4楽章に有名な「フニクリ・フニクラ」の旋律が、若干形を変えて使われていること。

シュトラウスは、ナポリに古くから伝わる民謡だと思って使用したそうですが、実はヴェスヴィオ火山に敷設された登山鉄道をPRするために作られた歌だったとか。

そのためにシュトラウスは、この曲が演奏されるたびに、著作権料を支払わざるを得なかったということです…。


第1楽章「カンパーニャ地方にて」は、

夜が明けるにつれて、徐々に明るさが自然の隅々に行きわたり、

その美しい姿がだんだんと視界に浮かび上がってくるような、そんな静かな感動が描かれた音楽です。

ワーグナーの『神々の黄昏』やラヴェルの『ダフニスとクロエ』の夜明けの音楽のように、劇的な感動を伴なった音楽ではありませんが、

その描写の巧みさは、素晴らしいと思います。

第2楽章「ローマの廃墟にて」の標題から、

私はつい“廃墟に佇み、栄枯盛衰を想う”ような、情感豊かな音楽を想像(期待)するのですが、

シュトラウスは古の人々の楽しげな生活を思い浮かべるのでしょうか。

ここにも、「フニクリ・フニクラ」の旋律の断片らしきものが登場する、快活な曲調に支配された楽章です。

第3楽章「ソレントの浜辺にて」は、月明りに照らされた夜の海辺の印象を描いた、情緒豊かな美しい曲。

懐かしい想い出が込められているように感じられます。

終楽章は、前述したとおりの内容で、快活で明るい曲!


全4楽章の中で、私は第1、3楽章は好きな曲で、しばしば単独で採り出しては愛聴しています!

落ち着いた風情が感じられる、ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデンのディスクがお薦めできると思います。

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