正月の三が日が過ぎてから、モーツァルトの初期の交響曲(第1〜20番)を、作品順に毎日一曲ずつ聴いています。
大好きな作曲家ではあるのですが、「モーツァルトの曲なら、何でも…」というほどの徹底したマニアではありませんし、
そもそもこれまでに第1〜24番までの交響曲を真剣に聴いたことなど、一度もありませんでした…。
「気に入った作品に出会えれば…」くらいの気楽な気持ちで、クラウディオ・シモーネ指揮するイ・ソリステ・ベネティアの演奏で聴き始めたのですが、最も気に入ったのが、第14番(K.144)。
幼さと、後期の作品かと思えるような深みが同居した、興味深い作品と感じられました。
第1楽章は第1主題は、それまで聴いてきた1〜13番と比べると、格段に気高い音楽ですが、
それに続く幼く愛らしい第2主題が、途中で逡巡するようにリタルランドするのは、高貴さを真似るような茶目っ気が感じられるのです…。
第2楽章は、時を刻む振り子時計を模したように感じられますが、それが並みのものではなく、高価な宝飾が施されたような、ちょっと魅力的な印象が…。
第3楽章のメヌエットの主題の明るさと、勿体をつけたようなトリオ部との対比が、なんとも愛らしく感じられます。
終楽章は、軽快で心地良く、曲の進行に伴い少しずつ変化する弦のパセージの表情は、成熟したモーツァルトの音楽を感じさせる素晴らしいものですが、ここでもフルートによる合いの手が、曲にユーモアを添えます…。
この曲を聴いていると、音楽家として急速に成熟していくモーツァルトと、
生活の糧を得るために、どんな音楽を書けば聴衆に喜ばれるかを熟知した少年作曲家。
作曲年代順に初期の交響曲を聴いて、そんな両面が初めて表われた作品のように感じました…。