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ジョルジュ・ビゼー:交響曲『ローマ』

ジョルジュ・プレートル指揮  トゥールーズ・キャピトル管弦楽団


1857年、当時各種部門の新人アーティストの登竜門であったローマ大賞を受賞したビゼー(1838-1875)は、副賞としてローマのフランス・アカデミーに2年間留学していましたが、

当地が気に入ったのか、終了後も1年間逗留してイタリア各地を旅行。

その時に二つ目の交響曲の作曲を思いつき、完成の暁には、楽章ごとにローマ、ヴェネティア、フィレンッツェ、ナポリの各都市に、別々に捧げようと考えました。

ビゼー自身が各都市を訪れて受けた何らかの印象を、それぞれの楽章に盛り込もうと意図したと考えても、決して的外れではないと思います…。


1860年に曲を構想した段階では、ある程度の草稿は出来上がっていたのかもしれませんが、

それを一つの交響曲としてまとめることが難しかったのか、1866年に初稿が完成したものの、

その後1868年と1871年の二度にわたって改訂が施されましたが、それでもビゼーは満足できないままで、

結局彼の生前には、全曲をまとめて演奏されることはありませんでした。


ビゼーの交響曲と言えば、17歳の時に作曲された『ハ長調』の作品が有名ですが、

何度も改訂を繰り返された交響曲『ローマ』方が、楽想にアイデアが凝らされていて、私はこちらの方を好みます…。

曲を聴いた印象では、ビゼーが当初意図したであろう、楽章ごとにそれぞれの都市が描き分けられているとは感じられませんが、

異国情緒に溢れた美しい音楽は、後の『カルメン』や『アルルの女』の音楽にも通ずるものだと思います。


第1楽章では、冒頭のホルンと木管が奏でる旋律からは旅情を、少し厳めしい旋律からは古代から伝わる歴史が…

第2楽章中間部の旋律は、どこまでも広がる碧空を思わせる伸びやかさで、それに続くフーガ風の音楽は、期待で心がウキウキするような楽しいもの…

第3楽章では、夜の静寂から浮かび上がるような、各種木管楽器やハープの音色の美しさは格別に美しい趣が…

第4楽章は、祭りお思わせる明るく楽しい音楽ですが、なぜか清潔で好ましい印象が余韻として残るのです…。


ミシェル・プラッソンの、力が抜けた自然体の演奏が、この曲の伸びやかな美しさを引き立てているように感じました。

『ハ長調』交響曲がお好きな方は、こちらの方も是非!

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