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リムスキー=コルサコフ:交響的絵画・組曲『金鶏』

ミカエル・プレトニヨフ指揮  ロシア国立管弦楽団


リムスキーーコルサコフ(1844-1908)が、晩年の1906〜1907年にプーシキンの原作に基づいて書かれた台本に作曲したオペラ。

その背景には、圧倒的な兵力を擁しながらも日露戦争に敗れた帝政ロシアの指導者に対する強烈な批判があったことは明らかで、当局の規制の為に作曲家の生前に演奏されることは、ありませんでした。

リムスキー=コルサコフは生前、このオペラを演奏会用組曲としても発表する構想を練っていましたが、突然の死によって叶わず、

その志を継いだ夫人の要望で、弟子のシテインべルグとグラズノフによって、「歌劇『金鶏』からの4つの音楽的絵画」としてまとめられました。

オペラの筋書きに関しては、私には全く知識がなかったために、こちらの説明を参照させていただきました。


これまでは、組曲版のライナー・ノートに書かれたストーリーから、

茫洋とした掴みどころのない喜劇的な側面と、のんびりとして優雅なオリエンタリズムを想像し、けっこう楽しみながら聴いていましたが、

今回初めて粗筋を読んで、組曲版から受ける印象とストーリーとの乖離に少々驚きましたが、

風刺を内容にしたオペラであれば、それも善しとは思います…。


第1曲「序奏とドドン王の眠り」は、いきなり金鶏を表わすトランペットが鳴り響き、不吉な予感を漂わせた序奏部が開始されますが(ストラヴィンスキー『火の鳥』の冒頭と似ています)、

それに続く王の眠りを表わした音楽は、穏やかそのもの…。

第2曲「戦場のドドン王」は、先に戦場に赴き、戦死した二人の屍を発見する場面でもあるのですが、

組曲ではそんな修羅場は表現されておらず、ただ殺伐とした不気味さが漂っています。

第3曲「ドドン王とシェマハの女王の踊り」では、シェラザードを髣髴するような、オリエンタリズムに溢れた美しい音楽に、魅了されました!

第4曲「婚礼の祝宴とドドン王の哀れな末路と死」では、華やかではあるのですが、どこかユーモラスな凱旋行進曲が…。

しかし、金鶏に頭を突かれて死ぬドドン王を表わす不吉な音楽で、曲は終わります。

このエンディング部分、昔聴いたラインスドルフ/ボストン饗盤では割愛され、華やかな行進曲が盛り上がったままで曲が終了していた時ぽくしています。


「音楽的絵画」と言われるように、ひたすら音に集中していると、様々なイマジネーションが膨らんでくる、

リムスキー・コルサコフの音楽はそういう楽しみ方ができて、私は結構好きなのです!

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