生活の拠点をドイツにおいてヨーロッパ各地で作曲家・ピアニストとして活躍していたにも拘らず、自らの祖国はハンガリーと考えていました。
この交響詩は、リストが29歳の1940年にハンガリーを訪問した際に、祖国の詩人から献呈された詩からインスピレーションを得て作曲したピアノ曲を基に、1854年に交響詩として完成させたもの。
演奏にはおおよそ25分を要する大曲ですが、緊密な構成によってドラマティックな展開をみせる音楽ではなく、
そこかしこにハンガリーの歴史や民族的な抒情が散りばめられた、そんな趣の作品と感じます。
各テーマごとの強い脈絡は感じられませんが、クライマックスでは祖国の誇りを高らかに歌い上げる作品となっています。
過去の暗い歴史を思わせるような重苦しい導入部で開始されるこの曲は、低弦のピッチカートに誘われて楽しげな民族舞踊へと楽しげに高揚していきます。
まるでカーニバルのような賑わいの中に、ヴァイオリンソロで奏でられるジプシー的な哀歌は、ハンガリーの抒情が偲ばれる美しい音楽!
小太鼓のリズムに乗って奏でられるファンファーレに導かれるように、
彼の最も有名な交響詩『レ・プレリュード』を髣髴させるようなフィナーレは、エンディングにむかって勝利の凱歌を歌いあげるように、圧倒的に盛り上がっていきます。
すでにグローバル化されている作品に関しては、本場物を云々するつもりは毛頭もないのですが、
この曲のように演奏される機会が殆どなく、稀にあったとしても『リスト交響詩全集』といった形でしかディスク化されないような作品に関しては、
アルパド・ヨー指揮するブダペスト交響楽団のような本場物を感じさせる演奏の味わいは捨てがたいもの。
この演奏を聴いて、この曲の味わいを初めて知った次第です。