アルト、ヴィオラ、ピアノとう組み合わせから想像できるように、華やかさとは一線を画したものですが、
その落ち着いた美しい音色からは、人生の艱難辛苦を乗り越えてきた人の、滋味深い言葉を聴くような感慨が得られます。
1曲目Gestille Sehnsucht(鎮められた憧れ)の、人生の黄昏時における孤独な心境を詠んだリッケルトの詩が歌われますが、
ヴィオラとピアノが奏でる音楽が、そんな寂寥とした心を優しく包み込むように慰撫するような…。
2曲目のGeistliches Wiegenlied(聖なる子守唄)でヴィオラが奏する前奏部の旋律は、クリスマス・キャロルから採られたものだそうですが、どこか懐かしさが感じられる音楽です…。
ローペ・デ・ヴェーガのこの詩は、(私見ですが…)受難に遭って死した我が子キリストを思う母マリアの悲しみを詠んだものと思うのですが、
この慈しみ深い音楽は、ブラームスの信仰心を表わしたものなのでしょうか。
この曲を初めて知ったのは、ヴィオラ・ソナタと併録されていたイリス・ヴェルミョン盤(ヴィオラ:ヴェロニカ・ハーゲン、ピアノ:パウル・グルダ)を聴いた時。「佳い曲だなぁ!」と思いましたが…
その後に聴いたジェシー・ノーマン盤での、慈愛あふれる深々とした温かい演奏には、単なる佳曲を超越した、ドイツロマン派作品の一つの頂点のように思えました。