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シューベルト:弦楽四重奏曲第13番『ロザムンデ』D.804 

イタリア弦楽四重奏団


1824年、シューベルト27歳の作品。

第2楽章の変奏曲に、前年に作曲された劇付随音楽『キプロスの女王ロザムンデ』中の間奏曲の主題が用いられているために、“ロザムンデ”の名で呼ばれています。


第1楽章冒頭部、チェロとヴィオラが奏する揺れるようなリズムと、ヴァイオリンが奏する憂愁に彩られた第1主題が醸し出す雰囲気は、

さながら水面から朝霧が立ち昇る晩秋から初冬の風景を髣髴させるもの。

展開部での楽器ごとに奏する旋律は、様々な心情が静かな水面に波紋のように拡がってゆく、そんなイメージを思い浮かべるような音楽です…。

第2楽章で提示される主題の、しみじみとした美しさ!

それに続く変奏は、刻々と移りゆく渓谷の風景を水面に映しながら流れゆく川のように、

さりげなく転調を繰り返しながら、様々な心情を表出するような趣が感じられます!

第3楽章冒頭のチェロの呼び掛け、そしてそれに応える、儚くも美しい夢の中を揺蕩うような音楽…。

トリオ部の、憂愁の中からほのかに湧きあがるワルツは、

シューベルトの数ある作品中、最高に美しい曲の一つではないでしょうか。

第4楽章のどこかに翳りを残した明るさ、楽しさは、

病魔に侵されていることを察知しつつも、それを音楽の創作にまで昇華して振舞う、シューベルトの健気な心情と感じるのは、深読みのしすぎなのでしょうか…。


イタリア弦楽四重奏団の演奏は、悲痛さを際立たせることはなく、

しかも個々の楽器が奏する流麗な旋律は、さりげないカンタービレに満ちており、

シューベルトの歌心と見事にマッチングしたものだと思います。


尚、この曲の第1楽章には、初期の歌曲『糸を紡ぐグレートヒェン (D118) 』と、

そして第3楽章は、歌曲『ギリシアの神々(D667)』と、

それぞれ関連性のあることが指摘されています。

真実は判りませんが、何も言われずに聴き比べたとしたら、私には類似点を指摘することは、多分できなかったと思います。

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