最近聴いたCD

ベーラ・バルトーク:中国の不思議な役人(全曲) 

イヴァン・フィッシャー指揮  ブタペスト祝祭管弦楽団


ハンガリーの脚本家レンジェルの書いた同名のパントマイムのために作曲された舞台音楽です。

あらすじは、3人の男と1人の少女が、男を誘惑して金を奪おうと企みます。

最初に誘惑した老人は、金がないのに少女への欲望を遂げようとし、男たちに叩き出される。

次に誘惑したのが、初心な若者。金は持っていなかったが、少女に好意を抱き、不憫に思った彼女は彼を抱き寄せて一緒にワルツを踊るが、男たちにつまみ出される。

三人目は、金はたっぷりと持っているが、不気味な雰囲気の中国人の役人。

それを巻き上げるべく、彼の欲望を煽ることには成功したが、欲情した役人の不気味さに、少女は必死になって逃げまどいますが、

その様子を見た男たちは、役人を枕に押し付けて圧死させ、金品を奪う。

しかし欲情が昂じて死に切れれず、恍惚とした表情で少女を見つめる役人に止めをさすべく、ナイフで刺したり、ロープに首を吊ったりするが、それでも死に切れず、

その執念に観念した少女は、意を決して、成仏させるために役人に抱かれる。

ようやく思いを遂げた役人は、至福の声をあげながら息絶える…。

こんなオカルト的とも思える筋書きのパントマイムです。


エントリーしたフィッシャー指揮するブタペスト祝祭管の演奏は、序奏部から不協和音やアグレッシヴなリズムが荒れ狂う、おどろおどろしさや邪悪さが渦巻く音楽ですが、

前述したあらすじを知っていれば、抵抗なく音の洪水に身を任せることができるのではないでしょうか。

幕が上がってからは、それぞれの木管が奏でる個性的な旋律は、夜の裏通りに漂う妖しげな雰囲気や、しみついた煙草臭さを感じさせます…

役人が登場する場面では、言葉にならないほどの恐ろしさ(荒れ狂う不協和音)や不気味さ(低弦のピッチカート)が…

欲情を高めた役人が、恐怖に怯えて逃げまどう少女を追いかける場面での、原始的で力強いリズムと切迫感…

そして最終場面での、青白い炎がかすかに燃えるような不気味さと、感極まった役人の絶叫…

列記した場面も勿論ですが、全曲を通しても、私が聴いたどの演奏よりもリアリティにあふれた、すばらしいものだと思います!

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