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モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 

アシュケナージ指揮&ピアノ  フィルハーモニア管弦楽団


モーツァルトのピアノ協奏曲中、第20番や24番と並んで最も人気の高い作品です。

30歳代の半ばまでの私は、オーケストラの重厚長大路線にしか興味が示せず、モーツァルトの曲を好んで聴くことは殆どありませんでしたが、

唯一の例外がこの協奏曲の第2楽章!

1980年録音された、アシュケナージがフィルハーモニア管弦楽団を弾き振りした演奏でしたが、

メランコリーで、とことん美しいピアノの音色とロマンティックな歌い回しは、

30年近く経った今聴いても、感涙にむせぶ思いがします。


モーツァルトはこの曲の楽器編成において、

オーボエに変えて、当時としてはまだ目新しく、オーケストラで使い始められたばかりのクラリネットを使用しています。

そして曲の調性も、晩年のクラリネット協奏曲や同五重奏曲と同じく、イ長調を用いています。

さらに、他の交響曲や協奏曲の緩徐楽章の大部分がアンダンテで書かれているのですが、

この曲やクラリネット協奏曲の緩徐楽章が、例外的にアダージョで書かれているのは、

同五重奏曲の緩徐楽章がラルゲットで書かれていることからも推して、

楽器の特性を生かそうとするモーツァルトの意図があったのではないかと、ふと考えてしまいます。


そんなことを念頭に置きながら、ポリーニのピアノとベーム/ウィーン・フィルの演奏を聴いていると、

情緒纏綿としたアシュケナージの弾き振りからは感じられなかった、

静謐で清らかな美しさに包まれた、この曲の有する別な素晴らしさを味わうことができました。


一般的には、アシュケナージのモーツァルト演奏が推薦されることは少ないようですので、私が感じたこの演奏の素晴らしさを書かせていただきました。

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