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エドワード・エルガー:ヴァイオリン協奏曲ロ短調 

ヴァイオリン チョン・キョンファ
ゲオルグ・ショルティ指揮  ロンドン・フィルハーモニー管


今日は朝から曇天で、初冬を思わせるようなうすら寒い一日でした。

毎年のように、この時期になると突然に聴きたくなる曲の一つに、エルガーのヴァイオリン協奏曲があります。

全3楽章がメランコリーな楽想の中に高貴さが漂い、大好きな曲なのですが、

未だに全曲を味わい尽くすには至っていないと思うからです。


エルガー(1857-1934)が50歳を超えた1910年に書かれた作品は、

50分にも及ぶ長大さと、ソロヴァイオリンには超絶的な技巧が要求されるために、

曲の解釈も含めて、20世紀のヴァイオリン協奏曲の中でも、最大の難曲と評されているそうです。

今日は、チョン・キョンファのヴァイオリン、ショルティ指揮のロンドンフィルの演奏で聴きました。


第1楽章、オーケストラによって哀愁漂う旋律が提示された後にソロ・ヴァイオリンが入ってくるところは、無風の晩秋の森に舞う、ひとひらの落ち葉を思わせる孤独な風情が印象的な演奏!

曲の進行に伴いメランコリーは深まりますが、心は沸々と燃え上がるような趣を有した素晴らしい演奏です。

第2楽章は、ソロ・ヴァイオリンの奏でる詩情豊かで牧歌的な旋律は、晩秋のどこまでも澄みきった蒼穹の壮大さの中、冷涼な大気の中に揺蕩う魂のように、孤独感に溢れたもの!

第3楽章、一大叙事詩を語るようなオーケストラの中で奏されるチョンのヴァイオリンは、さながら木枯らしに舞う落ち葉のような風情が…。

とりわけカデンツァ部分では、それが凍てつくように痛切な孤独感へと高まり、最後には哀愁を湛えつつ、穏やかな抒情へと収束されていきます。


初めて聴いた頃には難渋に感じられたこの曲ですが、ショルティの格調の高いオーケストラ表現の中に展開される、チョン女史の透徹した解釈に惹かれ、集中が途切れることなく聴き終えました。

心から曲の良さを納得できた、素晴らしい演奏だったと思います。

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