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ドミトリー・ショスタコーヴィッチ:交響曲第1番 

ルドルフ・バルシャイ指揮  ケルン放送交響楽団


ショスタコーヴィッチ19歳時の1925年に、レニングラード音楽院の卒業作品として作曲されたもの。

曲の斬新さに理解を示せなかった指導教官のグラズノフやシテインベルクから、書き直しを命じられたそうですが…。

にもかかわらず、軽妙洒脱で、巧みな管弦楽法を駆使したこの作品は、国内外を問わず多くの音楽家から高く称賛され、

ワルターやストコフスキー、クレンペラーといった後世に名を残すような有能な指揮者によって西側でも紹介され、作曲家としてセンセーショナルなデビューを果たしました。


第1、2楽章は、ゲームに興じているような、スポーティーで心地良い音楽と感じられるのですが、

その開けっ広げな脳天気さが、逆に聴き手に意味深長な印象を与え、様々な憶測を生ませるのだと思います。

しかし、この2楽章の終わりの部分でピアノが強打され、俄然様相が一転して、当時の不穏な現実の世界に引き戻され…

第3楽章では、深刻な不穏さに支配された音楽が展開され、最後に風雲急を告げるようなトランペットの警鐘が鳴り響くと、

アタッカで突入する第4楽章では悲劇的な戦いが展開されますが、その中には冷めたアイロニカルな眼が…。


ショスタコーヴィッチは長い間、“体制に迎合したプロパガンダ作曲家”と評されてきましたが、

1979年に、ヴォルコフ著の『ショスタコーヴィッチの証言』が英語で出版されて、広く世界に紹介された後は、

“自身が求める音楽と、体制が求めるそれとの乖離に葛藤した作曲家(WIKIPEDIAより)”と評価が変化し、

西側での演奏の機会が、大幅に増加しました。

つい30年ほど前までは、イデオロギーに翻弄されたこの作曲家の交響曲・弦楽四重奏曲や幾つかの協奏曲を、これから改めて年代順に聴き直したいと思っています。

それくらい魅力のある作品が多いように思えるのです…。

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