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シベリウス:クレルヴォ交響曲 op.7 

サー・コリン・デーヴィス指揮  ロンドン交響楽団・合唱団他


フィンランドの叙事詩「カレワラ」から、クレルヴォに関する物語を題材として、ソプラノ・テノール・混声合唱を伴なった、5つの楽章を持つ作品として完成されたもの。

まだ母親の胎内にいる時に、父を殺した上で、母親と交わり続けた男のもとで育てられ、

やがて奴隷として売り飛ばされたクレルヴォが、

たまたま出会い、契りを結んだ美しい女性と互いの身の上話をするうちに、

実は異父兄妹であることが分かり、

罪の意識に苛まれた女性は入水自殺。

運命を呪ったクレルヴォは、育ての親に復讐心を抱き、

彼を殺害したのちに、自らも妹の後を追う…という悲劇的なストーリーです。


各楽章には、作曲者自身によって、1)導入部、2)クレルヴォの青春、3)クレルヴォとその妹、4)クレルヴォは戦場に行く、5)クレルヴォの死、というように表示されています。

第1楽章:導入部
12世紀以来、他民族の支配下に置かれたフィンランドの歴史を物語る一篇の壮大な交響詩のような、抒情にあふれた音楽

第2楽章:クレルヴォの青春
青春時代の平穏な日々や、旅立ちを感じさせる音楽です

第3楽章:クレルヴォとその妹
中間部、若い二人の愛の語らいを表わすような、イングリッシュホルンの恍惚とした響き。弦のざわめきは、あまりにも残酷な事実に気付き始めた若い二人の心の動揺…。そして、コーダ部の、やり場のない憤りと後悔…。

第4楽章:クレルヴォは戦場に行く
勇壮さや憎しみよりも、亡き妹への追慕の情が感じられますが、後半部のしゃにむに突進するような音楽は、育ての父の殺害を表わすのでしょう。

第5楽章:クレルヴォの死
ほの暗さを感じさせる音楽は、やがて悲しみへとつながり、最後は壮大で英雄的な葬送の音楽で、曲は終わります。


この曲は、ストーリーを具体的に表現した描写音楽と考えても、差し支えはないでしょう。

ただ、シベリウスはそのことを嫌ったためか、彼の生前に演奏される機会は、ほとんどなかったそうです。

しかし、シベリウスの音楽が好きな私には、北欧の抒情が楽しめる音楽として、かけがえのない一曲だと思うのです。

特に第1、5楽章の壮大な抒情!

デーヴィスの説得力の強い演奏は、この曲の魅力を十分に伝えてくれる素晴らしいものだと思います。

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