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モーツァルト:セレナーデ第9番『ポストホルン』K.320 

クリストファー・ホグウッド指揮  エンシェント室内管弦楽団


全7楽章から構成される、大規模なセレナーデ。

『ポストホルン』とは、18〜19世紀のヨーロッパで、郵便馬車の到着や出発を知らせるために使われた金管楽器。管を三周巻いたもので、バルブを持たず、ホルンの仲間に分類されるようです。

この曲の第6楽章(メヌエット)の第2トリオでソロ楽器として使われているために、このような愛称で呼ばれています。


この曲を「隅から隅までが素晴らしい」と思ったのは、クリストファー・ホグウッド指揮するエンシェント室内管弦楽団の古楽器による演奏を聴いた時でした。

全楽章にわたって、愉悦感あふれる快適なテンポで貫かれていること…

近年流行の、ピリオド奏法と称する弦のアーティキュレーションが曲想とよく合致しているせいか、現代奏法では感じられない曲の愛らしさが感じられること…

そして現代楽器とは異なった音色を有するフルートやオーボエの、とくに第3・4楽章では、雅で美しい音色が堪能できること…

曲を熟知し、その良さを引き出したホグウッドの解釈が素晴らしいのだと思います。


定評あるK.ベーム/ベルリン・フィルの、名手ゴールウェー(フルート)やコッホ(オーボエ)を配した、高貴さ漂う演奏と比べながら聴いていると、

醸し出す雰囲気の異なる素晴らしい二つの演奏に浸れる喜びとともに、

モーツァルトの音楽の持つ懐の深さが、実感できるのです。

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