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ヴォーン・ウイリアムズ:交響曲第5番 

サー・エードリアン・ボールト指揮  ロンドン・フィル


この交響曲は、戦争への不安が高まる1938年から、第二次世界大戦のさなかにある1943年にかけての、世情不安な時期に作曲されたもの。

しかしながら、大胆な不協和音を使って闘争と不安を表現した作曲された第4番とはすっかり趣が異なり、

プロテスタント世界で最も多く読まれた宗教書と言われる『転炉遍歴』に収載された讃美歌から、インスピレーションを得て作曲されたといわれるこの曲は、

随所に讃美歌の旋律が使われているためか、全曲にわたって穏やかさに支配された交響曲となっています。

時代の不穏な空気を超越したような音楽は、戦争さなかの1943年に初演された時には、聴衆から大変好意的に迎えられたことも、納得できるように思います。


第1楽章冒頭の穏やかなホルンと、それに呼応する弦の響きは、さながら春の気配を感じさせるような、田園的な平和に満ちた雰囲気が…。

静かな中にも高まりをみせて、爛漫とした春の喜びが感じられます。

第2楽章では、ヨナ抜き音階が登場するためでしょうか、随所に、日本の祭囃子のような音楽が聞こえてきます。

第3楽章は、木管楽器が奏でる旋律の穏やかで美しいこと!

この楽章には、前述した讃美歌がいくつも登場しているそうですが、私には宗教的なイメージは感じられず、ただ黄昏時の穏やかなひと時を思わせるような音楽と聞こえます…。

第4楽章、ここでも日本の横笛を髣髴させる音色の祭囃子が登場します。クライマックスでは第1楽章冒頭の穏やかさが、高揚した感じで再現された後、

穏やかに、祈りを思わせる穏やかさを保ったままに、曲は終わります。

この曲の演奏では、中声部の充実した響きが美しい、サー・ボールト指揮するこのディスクが、最も曲想に合致した名演だと思っています!

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