しかしながら、大胆な不協和音を使って闘争と不安を表現した作曲された第4番とはすっかり趣が異なり、
プロテスタント世界で最も多く読まれた宗教書と言われる『転炉遍歴』に収載された讃美歌から、インスピレーションを得て作曲されたといわれるこの曲は、
随所に讃美歌の旋律が使われているためか、全曲にわたって穏やかさに支配された交響曲となっています。
時代の不穏な空気を超越したような音楽は、戦争さなかの1943年に初演された時には、聴衆から大変好意的に迎えられたことも、納得できるように思います。
第1楽章冒頭の穏やかなホルンと、それに呼応する弦の響きは、さながら春の気配を感じさせるような、田園的な平和に満ちた雰囲気が…。
静かな中にも高まりをみせて、爛漫とした春の喜びが感じられます。
第2楽章では、ヨナ抜き音階が登場するためでしょうか、随所に、日本の祭囃子のような音楽が聞こえてきます。
第3楽章は、木管楽器が奏でる旋律の穏やかで美しいこと!
この楽章には、前述した讃美歌がいくつも登場しているそうですが、私には宗教的なイメージは感じられず、ただ黄昏時の穏やかなひと時を思わせるような音楽と聞こえます…。
第4楽章、ここでも日本の横笛を髣髴させる音色の祭囃子が登場します。クライマックスでは第1楽章冒頭の穏やかさが、高揚した感じで再現された後、
穏やかに、祈りを思わせる穏やかさを保ったままに、曲は終わります。
この曲の演奏では、中声部の充実した響きが美しい、サー・ボールト指揮するこのディスクが、最も曲想に合致した名演だと思っています!