ところが意外にも、この曲がコンサートで演奏されるとの情報を聴いたことがありませんし、
ディスク化されている数も少なく、7〜8年前に探した範囲では確か6種類程度…。
『演奏技術的にも高いものを要求し、各楽器は時には協奏曲のような妙味も見せ、モーツァルトの他の弦楽四重奏曲よりもよほど難しい<ウィキ・ペディアより>』ことが、その理由なのでしょうか。
全6楽章からなるこの曲の素晴らしさは、
主旋律を奏でる楽器が変わるごとに、伴奏にまわる楽器が即興的に微妙に表情を変化させていく、その阿吽の呼吸にあると思うのですが、
このコンビの演奏は、思わずため息が出るほどに、絶妙な美しさが感じられます。
第1楽章などは、その典型ではないでしょうか!
第2楽章のアダージョは、微妙に移ろいゆく光と影が味わえる、奥の深い素晴らしい演奏!
第5楽章(メヌエット)の中間部、第1、2トリオの、雅で美しい中にも無邪気さが感じられるワルツの愉悦感は絶品!
終楽章のロンド主題は、幼い頃に夕焼けの秋空を見ると感じた物悲しさが甦るような、そんな懐かしさにあふれた音楽です。
モーツァルトの音楽を讃える言葉として、よく『神品のような…』と言われますが、
この曲は、弦楽四重奏曲第14番の終楽章やピアノ協奏曲第27番とともに、
その透明な美しさから、無邪気だった幼い頃の懐かしい感慨を思い浮かんでくる、
まさに神品という言葉に相応しい曲であり、演奏だと思います。