受験勉強の合間(?)に、それらを取っ替え引っ替えしながら、繰り返しクラシック音楽に親しんでいましたが、
中でもフルトヴェングラー/ベルリン・フィル(1949年)のブルックナーの交響曲第7、8番の豪華カートンボックス入りの4枚組LPは、
今でこそ主情的に過ぎるといわれ、それほど高くは評価されていませんが、当時の私には、かけがえのない宝物のような演奏でした。
大学を卒業して、サラリーマンとして多忙な日々を送るうちに、いつしか私のブルックナー熱は、冷めていきましたが、
大好きだった第7番の第1楽章には、澄み切った青空のもとに果てしなく拡がる連なるアルプス連峰のように壮大な、絵画的なをイメージ抱いたまま…、
第2楽章には、敬愛する人の死に対する、強烈なまでの慈しみと悲しみの音楽として、深く心に刻まれたまま…、
この曲は、いつも心に残っていました。
1986年、ジュリーニがウィーン・フィルを振った第7番のCDが発売されたのを機会に、私は再びブルックナーを聴き始めました。
美しさの中に厳しさが感じられる、大変に説得力の強い素晴らしい演奏と思いましたが、
大好きだった第1楽章のイメージとして抱いていた、大らかな広がりが感じられなかったために、素直には共感することができませんでした。
そして、当時はまだ家に残されていたフルトヴェングラーのLPを聴いても、悲しいことに嘗ての感動は甦りませんでした。
ヨッフムの演奏を初めて聴いたのは、2年ほど前のことです。
彼のブルックナー演奏は、恣意的で大らかさに欠けると評する人もいるようですが、
私には、曲はごく自然に流れていると思えますし、大変に分かりやすい、心地良い音楽と感じられます。
第1楽章には、以前に感じた壮大さよりも、のどかな自然の姿が!
第2楽章には、懐かしくも美しい静かな安らぎが!ワーグナー・チューバの響きには、心打たれるものがあります。
第3楽章には、自然に遊ぶ穏やかな喜びが!
そして第4楽章は、宗教的な厳かさこそ感じられませんが、
呼びかけるような主題の提示に対して、試行錯誤しながら解決に導かれていくような、喜ばしい気分の高揚が感じられるのです。
そして、コーダ部分のホルンの神々しいまでの清らかな響き!
最近、最も気に入っているブルックナー演奏です。