グーテンベルグの印刷技術発明から400年を記念して作曲されたもので、3楽章からなる第一部シンフォニアと、10曲のカンタータからなる第二部によって構成される、全4楽章の作品。
作曲家メンデルスゾーンにとっては、この技術の発明なしには、楽譜の普及、ひいては音楽の普及は、遥かに困難だったと認識していたのでしょう。
そんな作曲家の思いが込められたのか、第1楽章冒頭のトロンボーンの奏する旋律の、朗々として晴れやかなこと!祝典的な気分が、いやが上にも盛り上がります。
この晴れやかさがいったん収まると、メンデルスゾーンらしい美しいファンタジーの世界が繰り広げられます。
第2楽章の高貴で雅やかなワルツにはノスタルジーが漂いますし、中間部ではワルツの合間に挟まれて1楽章冒頭の旋律が登場します。
グーテンベルグの昔を回顧するような趣で、これはなかなかの佳曲だと思います。
第3楽章は、夕べの祈りを思わせる穏やかさに支配された音楽ですが、うっかり聴いていると、どこかブラームスのセレナードを思い浮かべるのですが、ちょっと薄味で…。
終楽章のカンタータは、旧約聖書のドイツ語訳が用いられているそうです。
歌詞の意味を考えながら聴いているわけではありませんが、
6曲目の終わりの部分、久遠から響くように歌われる、ソプラノによる“Die Nacht ist vergangen(夜は終わった)”から、
第8曲コラールに至る音楽の壮大さには、
人声の表現力の豊かさに、酔いしれるような高揚感を覚えました。
それほど多くの演奏を聴き比べたわけではありませんが、アバド指揮するこの演奏は、若々しさが漲った、すばらしい演奏だと思うのです。
私の学生時代の友人で、大阪府下の某市のアマチュア合唱団に所属している男が、オケと一緒にこの曲を歌ったとか!
音痴ゆえに、歌うことはとっくに諦めている私でも、思わず唱和したくなるような、すばらしい演奏でした。