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モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.379

オーギュスト・デュメイ(ヴァイオリン) マリア・ジョァ・ピリス(ピアノ)


この曲は、モーツァルトの作品の中でも、若々しく夢見るように美しい感興をわき起こす、私の大好きな一曲です。

彼が父に宛てた手紙によると、「この曲は、前夜の11〜12時の間に作りましたが、余りに疲れていてヴァイオリンのパート譜しか書けず、ピアノパートは記憶しておいて弾くことにしました」

モーツァルトならばのエピソードでしょうが、それにしても、わずか1時間でこの名曲の全体像が着想されるなんて…。


ピアノのアルペジオで始まる第1楽章の序奏部。
ピリスの演奏は、澄み切った静かな水面に湧きあがる泉の波紋を思わせる、瑞々しく美しい音楽です。

デュメイの、少し翳りのあるヴァイオリンの音色も、気品のある大人のたたずまいを感じさせるこの序奏部には、ピッタリの美しさ…。

一転してアレグロで開始されるト短調の主部は、愁いを含みつつも、甘えるような親しさが感じられる音楽が展開します…。

第2楽章の主題と5つの変奏は、モーツァルトの変奏曲にしばしば感じられる、微妙に移ろいゆく表情の美しい、夢のような演奏です。

ピアノだけで演奏される第1変奏は、オルゴールの音色を思わせる、夢見るような美しい響きが!

ヴァイオリンの音色が鳥の囀りを想わせる、楽しげな第2変奏…

短調に変わり、ゆったりとそして優しく旋律が歌い交わされる第4変奏…

そして、ヴァイオリンのピッチカートに乗って奏されるピアノの音色が、夢の中で花園を逍遙するような第5変奏…

至福の時間を感じさせてくれる、素晴らしい演奏だと思います!

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