ライプツィヒに戻ってから、その時の演奏を基にして譜面化し、
「リチェルカーレ(フーガ様式完成前の呼称):2曲」「カノン:10曲」「トリオソナタ:4曲」として王に献呈されたのが、今日我々が聴く『音楽の捧げもの』です。
トリオソナタの4曲を除いては、使用する楽器は指定されておらず、様々な楽器編成による演奏を愉しむことができるのです…。
冒頭の「3声のリチェルカーレ」、私の聴いた演奏の多くは、チェンバロで開始されていたように記憶しているのですが、
いきなり重厚な弦楽合奏で開始されるミュンヒンガーの演奏は、無窮の宇宙の拡がりを感じさせる厳格かつ壮大なもの!
思いがけないスケールの大きさに驚きつつも、バッハの音楽に惹き込まれていったものでした。
今朝久しぶりに聴いたこの演奏では、嘗ての強烈な印象が蘇るとともに、
2声の拡大反行カノンでのイングリッシュホルンのパストラール風の鄙びた響き、
トリオ・ソナタのラルゴやアレグロ楽章における雅やかなフルートの音色、
そして、重厚さの中に品格が滲み出るような、6声のリチェルカーレ等に、しみじみと聴き入りました…。
ドイツロマン派の香りを湛えた演奏と言えばよいのでしょうか。
ピリオド楽器による演奏が全盛の昨今では、なかなか耳にすることができないものですが、
こんなバッハ演奏もあったのだということを、是非一度は体験されることをお薦めします。