最近聴いたCD

レナード・バーンスタイン:アリアとバルカロール

F・フォン・シュターデ(メゾ・ソプラノ)  T・ハンプソン(バリトン)
マイケル・ティルソン・トーマス指揮  ロンドン交響楽団


昨日の午前中は、珍しくアルヴォ・ペルトの、宗教的な静謐さを湛えた世界にのめり込んでいました。

心洗われる素晴らしい音楽体験だったのですが…

一夜明けると、昨日の反動からか、原寸大の人間を感じさせる音楽、それも何故かバーンスタインの作品が、無性に聴きたくなってきたのです…。

どちらも、普段は殆んど聴くことのない作曲家なのですが、宗教的vs世俗的な曲を聴いて、心のバランスをとろうとしたのでしょう…。


1988年、バーンスタインの晩年に作られた歌曲集『アリアとバルカロール』は、20世紀後半のアメリカの結婚生活をテーマにしているとか。

愛妻フェリシアとの間に3人の子供に恵まれたものの、

自らの同性愛傾向が強かったために協議離婚、

その後フェリシアは癌に侵され、バーンスタインの献身的な看護のかいなく、1978年に死を迎えるなどの不幸が続き、

精神的に大きなダメージを受けた彼にとっては、理想の結婚生活を夢見て作られた曲なのかもしれません。

本来はメゾ・ソプラノ、バリトンと四手のピアノのために書かれた作品ですが、私の聴いたのは、ブルース・コーリン編曲によるオーケストラ版。


かっこいい曲でした!温かくって、ダンディーで、ちょっと悲しくって…。

メゾのフォン・シュターデとバリトンのハンプソンの、飾り気のない素直な歌唱は、素晴らしいの一言!

前奏曲のオーケストラ部を聴いた時には、ストラヴィンスキーの『火の鳥』を思い起こしたり…

第2曲の、ほほえましくなるような和やかなデュオ…

第5曲でのフルートとメゾが歌い交わす美しく幸福なひと時…

第6曲での、鳥たちの歌い交わす歌声…

豪放磊落さ感じられる第7曲のマーティング・バンド…

そして、「愛に言葉は要らない…」かのように、ヴォカリーズで歌われる終曲の美しさ!

指揮者としても、作曲家としても成功をおさめたバーンスタインが、こんなどこにでもありそうな幸せを願っていたのかと思うと、切なさを感じてしまいます。

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