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シューベルト:交響曲第9番『グレート』

カール・ベーム指揮  シュターツカペレ・ドレスデン


シューベルトの死の8か月前に完成された、最後の交響曲。

ウィーンの楽友協会から、新作の交響曲を依頼されたシューベルトは、前年のベートーヴェンの死に影響を受け、彼の作品に匹敵するような、力強さと大きな規模の作品を目指したと言われています。

しかし、楽友協会はこの作品を採り上げることなく作曲者に返却したため(余りに規模が大きすぎたのが、その理由のようです)、

その後シューマンによって発見され、メンデルスゾーンの指揮によって初演されるまでには、21年の歳月を要しました。


シューベルト特有のロマンに溢れたこの名曲は、多くの指揮者によって取り上げられていますが、

私が一番よく聴いたのは、K.ベーム/ベルリン・フィルのLP盤でした。

望洋としたロマンに偏って、途中で集中力が途切れてしまう演奏が殆んどだったのですが、

ベームの演奏は、引き締まった力強い骨格の中に、シューベルトの悠久への憧れや絶望が表現されており、求心力が強く、最後まで集中できる演奏だったのがその理由でした。


そんなベームの演奏で、最晩年の1979年にシュターツカペレ・ドレスデンを指揮したライヴ録音を、初めて聴きました。

録音レベルが低目のため、若干ボリュームを上げて聴き直しましたが、冒頭のホルンセクションの、大変にニュアンスの豊かさに、まず惹きつけられました!

ライヴだけに、曲が進むにつれて演奏は白熱化していきますが、印象的な部分をいくつか挙げると…

第2楽章の2つの主題が提示された後、ぐっとテンポを落として奏でられる弦とホルンの、神品とも思える美しい対話!

第3楽章中間部のトリオの、涙が乾ききるまで泣き尽してもなお残る、残像のようなメランコリーの美しさ!

終楽章第2主題の、天上へと舞い上がる乾ききった涙を感じさせる、弦の刻む旋律と木管との対話、

不安に打ち勝とうとするように、敢然と打ち込まれるティンパニー…。

最晩年のベームによる、渾身の名演と申し上げられるでしょう!

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