最近聴いたCD

ブラームス:セレナード第1番 op.11


イシュトヴァン・ケルテス指揮  ロンドン交響楽団


この曲は、ブラームス20歳台半ばの1857-58年にかけて書かれた作品で、6楽章から構成されています。

交響曲第2番が、ベートーヴェンのそれになぞらえて、“ブラームの田園交響曲”と呼ばれますが、二曲のセレナードは、それ以上に田園的な音楽。

ケルテス/ロンドン交響楽団による演奏を聴くと、自然の息吹の中で生きる希望に満ちた若者の姿を髣髴させるような、抒情的で溌剌とした音楽と感じられます。

第1楽章冒頭のホルンが奏でる主題は、クラリネット、オーボエ、弦へと慌ただしく、しかし楽しげに移行していき、弾むような春の息吹が感じられる音楽です。楽章の最後にはテンポが落とされて、黄昏時を思わせる穏やかな抒情が漂います…。

第2楽章の、嵐の前の予兆のような不穏さを漂わせた音楽は、青春期の心の動揺を思わせるような、甘酸っぱい懐かしさが感じられます。

第3楽章の穏やかなホルンの響きは、月明かりに照らされた夜の森を想い起し、しみじみとした安らぎが感じられます…。

第4楽章は、森の中を逍遙するような第1メヌエットが終わり、突然現れる際立って美しい旋律の第2メヌエットを聴くと、胸のときめくような出会いが感じられます。

第5楽章は、勇壮なホルンがこだまする狩りの音楽。

そして第6楽章の、ひたすら前進する若々しさは、希望に満ちた音楽と感じられます。

交響曲に見られるような劇的な展開がない故に、それほど人気のある曲でもなさそうですが、

この曲の穏やかさは捨てがたい魅力を湛えたものですし、

ケルテスの演奏も、若々しい喜びがあふれた素晴らしいものだと感じました。

ホームページへ