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モーツァルト:交響曲第28番 k.200


コリン・デーヴィス指揮  
シュターツカペレ・ドレスデン


モーツァルトは14歳から17歳までの3年4ヶ月の間に、三度イタリアを訪れています。

その時期に多くのイタリア風カンティレーネ(小謡)に接することにより、彼の想像力が一層刺激されて、

その後の数々の傑作を誕生させる糧となった、とも言われています。

交響曲第28番は、三度のイタリア旅行を終えた17〜18歳時に書かれた彼の交響曲の中でも、

ト短調の第25番、後期の円熟を思わせる第29番とは一味違った、爽やかな抒情が感じられて、昔から好きな曲の一つでした。

コリン・デーヴィス指揮するSKDのCDは、横への流れが印象的な演奏で、そんな中で穏やかに移ろいゆく曲想が、とりわけ美しく感じられます。

第1楽章は、冒頭から木々の間を吹き抜ける爽やかな風や、鳥のさえずりを描写したような趣が感じられますし…

第2楽章は、ゆったりとしたドナウの流れの、川面に映しだされる移ろいをみるような、そんな風情を思い浮かべます…

第3楽章、弦の奏する流れの中で奏されるホルンの音色は、突出することはありませんが、大変に印象的なもの。

名手ダムが奏しているのでしょうか…。ひそやかな音色が持つ深い味わいは、極めつけの演奏と申せるでしょう。

爽やかに吹きぬける風を思わせる第4楽章冒頭に続き、

第1主題は、私は中学生時代に好きでよく歌っていた『旅愁』のメロディーを思い出すからでしょう、いつ聴いてもノスタルジーを感じます。

微妙に刻々と表情を変化させてゆくデーヴィスの演奏を聴くと、そんな思いが一層高まってきます。

秋の気配が感じられる昨今になると聴きたくなる、私の大好きなモーツァルト演奏の一つです。

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