最近聴いたCD

エネスク:ルーマニア狂詩曲第1番

コンスタンティン・シルヴェストリ指揮  ウィーン・フィル


曲名の如く、ルーマニアの作曲家で名ヴァイオリニストだったエネスコの代表作。

彼の作品の多くは、祖国の民族音楽に強く影響されていると言われています。

ところでこの曲ですが、代表作とはいっても、私の偏見かもしれませんが、真面目に鯱ほこばって演奏されてしまうと、その民族色に共感を覚えることもなく、何ら特徴のない音楽のように聴こえるのですが…

同じルーマニア生まれの指揮者、コンスタンティン・シルヴェストリの緩急強弱自在な演奏を聴くと、大変に面白い曲に一変するのです。

この指揮者、レパートリーはチャイコフスキーやドヴォルザークといった国民楽派から、ラヴェル、ドビュッシー、或いはヒンデミットといった近代の音楽までを主としており、

大変に個性的な解釈をする指揮者(いわゆる爆演系)として知られています。

時に信じ難いような濃厚なメロディーの歌わせ方で、感涙にむせぶような音楽を聴かせてくれたり…

時に未成年・気の小さい男性立ち入り禁止のような、妖艶な雰囲気漂う音楽づくりをしたり…

ただ、余りに個性的なために、辟易する演奏も多く、好き嫌いが真っ二つに分かれるでしょうから、表立ってお薦めすることには、つい二の足を踏んでしまいます。

ただし、エネスクのこの曲に関しては、曲想から考えるに、作曲者はこの演奏のように、酔っ払いの乱痴気騒ぎを思わせる爆演を期待したのではないだろうかと思えるのです。

演奏は天下のウィーン・フィルですが、このオケをまさに自由自在に操って、民族色に溢れた、実に楽しい演奏が繰り広げられているのです。

この演奏を聴いて、「これぞウィーン・フィルの音色!」とおっしゃる方が、果たして何人いらっしゃるでしょうか…。

とにかく、一度は物見遊山がてらに聴かれれば、話のネタにはなる、損のない演奏だと思います。

ホームページへ