最近聴いたCD

ドビュッシー:版画

ピアノ:ジャン=イヴ・ティボーデ


ドビュッシーが、ピアノ曲において印象主義的な技法を確立した作品と言われています。

第1曲“塔”は、パリ万国博で聴いたバリ島民のガムラン音楽に触発され、オリエンタルの世界を思い描きながら、

第2曲“グラナダ”は、未知の土地であったスペインの古都をイメージして、

第3曲“雨の庭”は、庭園に降りしきる雨からインスピレーションを得て、書きあげられた作品。

以前は、田部京子の奏でる、大気の香りまでもが感じられる、繊細さを極めた演奏が好きでよく聴いたのですが、

最近は、表現が明晰過ぎるかと思いながらも、色彩感に溢れた華やかさがこの曲に相応しいと感じ、その魅力に惹かれて、ジャン=イヴ・ティボーデの演奏を好んで聴いています。

第1曲では、右手と左手が各々鮮明に別世界の音楽を奏でているのですが、ブレンドされた音色からは、オリエンタルな情緒が…
とりわけ、アルペイジオで奏される部分を聴くと、桜吹雪の下で奏でられる琴の音色を髣髴とするような雅さが感じられて、日本的な情緒に浸れるのです…。

第2曲では、ハバネラのリズム(発祥はキューバですが…)や、ギターをかき鳴らすような奏法、情熱的な旋律など、スペイン情緒が横溢した、大変に明快な演奏だと思います。

第3曲は、庭に降りしきる雨のしぶきや、水たまりの波紋を見ながら、様々に空想をめぐらす子供のように、無邪気な遊び心が感じられる楽しい音楽です。
雲の切れ目からこぼれる陽射しに照らされて刻々と移ろいゆく、色彩の変化までもが表現されているような、そんな鮮やかさに惹かれる演奏です。

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