最近聴いたCD

チャイコフスキー:『眠りの森の美女』全曲

ミハイル・プレトニョフ指揮  ロシア・ナショナル管弦楽団


ここ10数年来、バレー音楽の全曲盤とはすっかり御無沙汰していました。

この種の音楽は、視覚を伴ってこそ、本当の良さが分かると思っていたからです。

唯一の例外だったのが、プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』。音楽を聴くだけで、内容が十二分に伝わってくる作品だと思うからです。

古今のバレー音楽を代表する『眠りの森の美女』は、ペローのおとぎ話に少々味つけをした内容ですから、ストーリーは極めて分かり易いもの。

と言うよりも、ストーリーは第2幕までであらかた終わり、第3(終)幕(オーロラ姫の結婚の場)では、ゲストたちのダンスが披露される、ただそれだけの場として、延々と45分が費やされています。

「バレーも観ずにこんな内容の音楽を2時間半以上(所要演奏時間)も聴くだけでは…」と、誰しもが思われることでしょうね。

でも昨日、「たまにはこんな曲もよかろう…」と、なにげなくミハイル・プレトニョフ/ロシア・ナショナル管弦楽団の演奏のプロローグ冒頭を聴き始めたのですが、余りに面白かったので止められず、一気に最後まで聴いてしまいまいた。

バレー・ダンサーにとって、踊り易いようなリズムやテンポを心得て音楽を付けるために、高い評価を得ている指揮者もいるようで、その姿勢を否定するつもりは毛頭もありませんが、

彼らの演奏を、スピーカーから流れる音だけで聴くと、退屈極まりなく感じることが時にあります。

しかしプレトニョフの演奏では、映像ですら見たことのないこのバレーの舞台を思い描きながら、いつの間にやらスピーカーの前に釘付けになったまま、聴き入ってしまいました。

音楽だけを聴く人のためを考えて、録音セッションに臨んでいるからなのでしょうか…。

久しぶりに、チャイコフスキーのバレー音楽に、夢とロマンを感じながら、楽しむことができました。

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