もともとは、チャップリンの無声映画のために作曲され、『ヴァイオリンとピアノのためのシネマ幻想曲』と名付けられていたもので、バレー化にあたり、作曲者自身によってオーケストラ用に編曲されました。
バレーの内容は、酒場を舞台として、そこの常連客である様々な人物が登場する設定になっているそうですが、特にストーリーらしきものはないそうです。
ただ、それら人物の百態を表現するために、協和音と不協和音が平然と混在するし、様々な楽器の音色が駆使され、転調を重ねられ、おまけに南米の民謡やサンバやタンゴなども織り交ぜられたり、何でもありの作品なのです。
普通の場合、こんなに雑多なものが詰め込まれた音楽を20分近くにわたって聴かされると、最初はいくら面白くとも、途中で集中力が散漫になって、退屈或いはうるさいだけの音楽と感じてしまうことが多いのですが…
一体どういう工夫が凝らされているのか、そのごちゃごちゃが面白くって、いつの間にか曲が終了するという趣向の音楽です!
嘗て、LP時代にバーンスタイン/パリ国立管の演奏を聴いた時には、
正直申して不協和音に辟易し、登場する雑多な曲が無節操に感じられて、とても曲を味わう心境にはなれませんでした。
近年はロナルド・コープ指揮する新ロンドン交響楽団の演奏を聴いていますが、多様な楽器の音色が楽しめるオケの演奏は、確かに楽しいもので、結構気に入っているのですが…
でも、僅か2つの楽器(ヴァイオリン&ピアノ)が奏でるこのディスクは、オケ版に負けない多彩な表現力と、それを上回る洒落た表現が楽しめる演奏。
これこそ、名人芸と言うに相応しいと思います!